「安ければ売れる」ではないし、「高いから売れない」でもない

「安ければ売れる」ではないし、「高いから売れない」でもない

2024/09/02

「安ければ売れる」ではないし、「高いから売れない」でもない

テーマ③「安ければ売れる」ではないし、「高いから売れない」でもない

◆「価格で負けた」は営業担当者のウソである

    約20年前、私が経営支援センター(前身会社ブリングアップ)に入社して間もないころ、弊社代表国吉の講演会の中でいまでも強烈に記憶に残っているエピソードがあります。

    営業マンの、「価格で負けた」の報告の90%はウソ。失注の言い訳を「価格」に転嫁するのが一番ラクですから。試しに、「赤字覚悟で競合他社の5割引きで見積りを出して良い、それなら100%取れるかな?」と尋ねてみてください。その部下は「受注できるかわかりません」と答えるはず、と。

    当時、入社したばかりの私は営業のイロハも分かりませんので、「本当にそんなことがあるのかな?受注も失注も価格次第だろう」、と思っていました。その後、自分自身も研修やコンサルティングの営業を行う中で、「高いかな」、と思った金額であっても提案先の経営者より悩みもせず即答で「YES」を頂いたケースも数多くありました。逆に金額を抑えた提案であっても、その金額に難癖をつけてくるお客様も存在しました。

    また、ある建材卸の企業を支援させていただいた時の事例を紹介します。原材料の高騰、急激な為替変動を理由に値上げを断行する際、営業担当者と同行し営業現場を回り徹底的にお客様の声を拾いました。多くのお客様の本当のニーズは納品期間の短縮にあるということが分かりました。そこで、納期を短縮する措置を万全に行ったうえで価格改定を行ったところ、スムーズに理解を得ることができ、利益率の改善につながりました。

    そのような経験を重ねる中で気づいたのが次の通りです。営業、特に、法人営業における値決めは、お客様の「値ごろ感」から決めるよりも、取りたい利益から逆算し価格を決定し、お客様にその価格を納得いただくことの方がはるかに合理的である、ということです。確かに「売れる、売れない」の多くが価格によって決まるケースもありますが、それは営業が介在しない、いわゆる「販売」です。まずは、お客様との接点をつくるドアノック商品を低価格で「販売」したとしても、その次に「営業」の力で利益を確保しなければなりません。営業は多少の高価格であってもお客様を納得させ、購入に結びつける気概が必要となります。商談が失注に至ったのであれば、その理由を「価格」に求めるのではなく、顧客との信頼関係構築不足や、フォロー不足、商品のクオリティ不足などを理由としなければならないのです。

◆「値決めは経営である

    故稲盛和夫氏の言葉ですが、「値決めは経営」。価格設定は非常に高度な判断を求められる幹部の仕事です。利益の最大化のため、熟慮に熟慮を重ねた結果です。営業レベルで、自社の商品の価格を「もうちょっと安ければ売れるのに」などと考え、安売りを行うことは言語道断であり、見積りは自信をもってお客様にその価格の根拠を説明しなければなりません。しかしながら、価格以外の部分で

お客様に納得をいただくのは難しいのも事実です。価格以外の部分で受注率を高めるポイントは次の通りです。

◆正しく価値・強みを伝え、お客様を動かすポイント

①知識を身につける

    まずは、自社の利益構造を理解するため、勉強が必要となります。売上、原価、経費、利益の構造を勉強し、適正な利益を確保するためには、毎月どれだけの粗利益を確保しなければならないかを把握する。また、商品別の原価を正確に理解することも重要です。

②強みのある商品

    他社と差別化ができておらず、特徴や強みがない商品は価格競争に巻き込まれがちです。自社しか取り扱うことができない商品を提案することで利益を確保できます。

③商品の特徴・利点を訴求する

    取り扱う商品の基本的な性能や品質、調達力、耐久性や信頼度など伝えたい内容を簡潔にまとめ伝えてください。

④提供できるサービスは何か

 納期対応、納品方法、在庫について、返品・交換、コールセンターの対応など、対応可能なことはお客様に理解いただいているでしょうか。

⑤人材、スタッフの底上げ

 迅速対応、約束遵守、専門性や経験、事例共有、丁寧なクレーム対応など社員教育をしっかりと行ってください。

⑥顧客のメリット

 お客様がこんなメリットを享受できるということを明確にする。例えば小ロット発注ができる、納期が非常に早い、小分け納品ができ、在庫管理の手間が省ける、等、価格以外のメリットは多くあるもの。

⑦根拠・実績 

    商品やサービスの特徴・利点を納得いただいたお客様の取引実績を紹介する、客観的な根拠やデータも営業ツールとしては大切です。例えば、購入理由一覧などはお客様を動かす良い資料となります。

◆高くても売る、それが営業である

    原材料価格は今後も高騰を続けることは間違いありません。適正な利益を確保できる価格でなければ会社は危機に瀕します。営業に求められることは、価格を抑え、売上シェアを拡大することではなく、いかに価格以外の部分で勝負し、お客様に納得をいただくか、です。そのために、自社の強みをしっかりと理解してください。

ポイント

安易に価格勝負に逃げていないか?適正な利益を確保してこそ、営業の存在価値。

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