SNSの普及により、フォロワーという言葉を聞いたことがある方は多いのでのはないでしょうか。しかし、本来ビジネスで言うフォロワーとは「上司を強力に支えるメンバー」を意味します。統計によると、組織の成功への貢献度はリーダーが20%、フォロワーが80%です。つまり、チームとしての成果はリーダー一人でつくるものではなく、いかに有能なフォロワーが存在するか、もしくは有能なフォロワーにメンバーが育っていくか、にかかっているのです。キリスト教が世界に広がっていったのは、イエスキリスト自らが布教をしていったわけではありません。イエスキリスト(トップ)の言葉を預かった宣教師・伝道師(フォロワー)たちが世界各地で布教に励んだおかげで、いまの繁栄があるのです。今回は、組織におけるフォロワーの重要性について解説していきます。
「あいつは上司に反抗的だ!」
食品卸売業A社の営業部、鈴木係長は部下の高田主任の存在がやや煙たく思っています。なぜならば、高田主任は非常に正義感が強く、成果、組織のためと思えば上司である鈴木係長に対しても物怖じもせず「それは違うと思います!今回はこちらの施策の方が有効だと思います!」と主張をしてくるからです。鈴木係長は部下は上司の指示は絶対であり、YESマンであるべきという考えを持っていますので、高田主任の態度はただ、上司への反抗と映っています。
ある日、鈴木係長は田中課長に相談しました。「高田の態度は少し問題があると思います。部下は上司の指示を聞いて、実行に移すのが本来の役割。上司に対し反抗をするのはいかがかと思います。」田中課長「なるほど、それでは高田主任の意見は正しいこともあるのですか?」鈴木係長「そうですね、頭の良い人材ですので、鋭い意見もあります。しかし、態度が・・・」田中課長「確かに部下である以上、上司の指示を聴くのは重要なことですが、組織の成長のためには上司に対し具申・提言できるフォロワーの存在も大事です。」
【解説】
上司にとってタダのYESマンは、有益なのでしょうか。逆に、物を申す部下は厄介者なのでしょうか。一般的にフォロワーには5つのポジションがあると言われます。それが次の通りです。
1.模範的フォロワー
積極的に物事に関与し、行動力もある。ただ言われたことをこなすだけでなく、自分自身の意見を持っている。
2.順応型フォロワー
積極的に物事に関与するが、YESマン。自分自身の考えはない。
3.実務型フォロワー
積極的でもなければ消極的でもない。批判的でもなければYESマンでもない。状況を見極め、指示された範囲以上の仕事はしない。
4.孤立型フォロワー
自分の意見を持ち、批評はするものの、行動が伴わない。反発心がある。「それは間違ってると思う。俺は関係ないけどね」
5.消極的フォロワー
積極性も自分自身の考えもない。ただの傍観者的存在。
組織の中で最も求められるフォロワーは「模範的フォロワー」です。模範的フォロワーはリーダーや他の同僚には次のように映ります。
①意欲が旺盛
②革新的かつ、独創的
③主体的に動く
④単なる批判ではなく、建設的な批評を行う
⑤リーダーに対して、物怖じなく接する
⑥個人ではなく、組織の利益のために動く
⑦仲間やリーダーをサポートする
⑧指示された以上の仕事をこなす
もともと模範的フォロワーの素質がある人も存在します。しかし、一般的には上司が、普通の部下を「模範的フォロワー」へと育成していかなければなりません。では、部下を有能な「模範的フォロワー」へと育てていくためには何を重視するべきでしょうか。
1.傾聴
部下の報連相を、しっかりと体を向け全身、そして心から聴いているか。批評・否定的な態度で話しをきくのではなく、まずは部下を認める。
2.場を与える
ただ、指示・命令をしその確認を行うだけの仕事ではなく、自ら考え行動をしなければならない場、業務を与える。
3.考えを尋ねる
「あなたならどういうやり方が良いと思うか?」答えを教えるのではなく、まずはどうすれば良いかを考えさせる。
4.否定しない
たとえ、その部下の意見が自分とは異なっていても、頭ごなしに否定をしない。最も重要なのは組織としての成果。
5.責任を持たせる
ただ口だけではなく実行まで促すためには責任を与えなければならない。主張するのであれば自分が実践する風土をつくる。
鈴木係長は自身と意見が異なる高田主任の主張もまずはを一方的に否定すことを止めました。そして議論を行い良い意見は取り入れていきました。
【ポイント】
組織の成功は有能なフォロワーの有無にかかっている。リーダーは、耳が痛くとも具申・提言する部下を育て上げよ。