褒め方と叱り方

褒め方と叱り方

2022/10/15

褒め方と叱り方

 

 最近の新人・若手社員は叱られ慣れていない、とよく言われます。確かに、それは真実です。少し叱られただけで落ち込んでしまい上司が指導に困ってしまうという事例は多くあります。2022年4月より中小企業でもパワハラ防止法が施行されました。「この指導はパワハラに該当するのかな?」と多くの管理職の方が部下指導の場での厳しい指導をためらっています。

    また、昨今の「部下は褒めて伸ばしなさい」という風潮のもと、疑問を感じながらも、褒めることを習慣としている方も多くいます。私自身も研修の現場で、「褒める」、「叱る」ことに苦手意識を持っている上司の方は年々増えてきていると感じます。今回は部下指導における、効果的な「褒め方と叱り方」を解説していきます。

「最近の若手は叱られると落ち込みやすくて・・・」

  

食品卸売業A社の営業部、鈴木係長は新人の指導に悩んでいます。お客様の来社の際、ある新人の挨拶・言葉づかいがマナーに反したものでした。接客後、鈴木係長は厳しい指導が必要と考え、「いまの対応はダメ!新人研修で何を学んだの?」と強い口調で叱責を行いました。それ以来、彼女は落ち込んでしまい、鈴木係長から話しかけられると怯えた表情さえ浮かべます。

    ある日、その件で山田課長に相談しました。「最近の新人は叱られるとすぐに落ち込んでしまいます。」山田課長「なるほど、どのように叱ったのですか?」鈴木係長「事務所内で厳しい口調で叱りました」山田課長「叱ることは確かに必要です。ただし、適切な叱り方をしなければ育成どころか逆効果になることもあります。」

解説 

そもそも、部下指導において、「褒める」、「叱る」こと自体が目的とはなり得ません。素晴らしい取り組みを継続して欲しいという目的があって褒めるのであり、行動を改めてほしいから叱るのです。つまり「褒める」ことも「叱る」ことも部下の成長のための手段なのです。では、どのような褒め方、叱り方が効果的なのでしょうか。それが次の通りです。

1.効果的な褒め方

①尊敬される上司であるか

  部下から尊敬されていない上司が部下を褒めたところで響かない。部下から見れば、「私の方が仕事ができるのに、お前に褒められたくない。」上司自身が結果を出しているか、上司自身が尊敬に足る人柄か、いま一度振り返るべき。

②期待を持って接する

        期待を持ってその子供に接すると成績は伸びていく。教育現場でよく言われる、ピグマリオン効果。これは仕事においても同じ。「お前は出来ない奴だ」と罵声を受けると自信、向上心を失いミスが多発する。逆に「あなたならできる」と期待を込めた声がけこそが部下の自信につながり積極的な行動を促す。

③「褒める」よりも「感謝する」

「褒める」ことは知らず知らずのうちに上から目線となっている。特に、信頼関係ができていない状態では、褒めたつもりが「偉そうだ」と逆効果となる。その点、「ありがとう」や「助かる」など感謝の言葉は余計な上下関係が生じず、すんなりと部下は受け止める。

④人前で褒める

    朝礼の場、会議の場など、あえて他のメンバーの前で褒めてみる。部下の自尊心をくすぐる。また、他者の眼が生じるため、再度良い取り組みをしなければならない、という意識も生まれる。

⑤安易に褒めるな

    安易に褒めると「褒められる」ことを目的とするようになる。重要なことは上司に褒められることではなく、成果を上げること。意味もなく褒めるのではなく、やり方を指導し、結果を出し達成感を味あわせてあげることの方が重要。

2.効果的な叱り方

①信頼関係の構築

何を言うかよりも誰が言うか。叱るときには褒めるときよりも更に強固な信頼関係が必要となる。日頃から部下に対し自己開示をしているか、コミュニケーションは取れているか。この上司の言うことだから真摯に受け止めようという気持ちにさせなければならない。

②言葉丁寧、内容正論

部下がしてはならないことをしているとき、「言わない」という選択肢は取ってはならない。相手の感情に配慮しながら、言うべきことを言う。

③一対一で叱る

法律の施行により、残念ながら、皆の前で強い叱責を行うことはパワハラに該当する。しかし現実は強く言わなければならない場面も生じる。その場合には場を変えて会議室等で指導する必要がある。

④人格でなく事実で叱る

「だからお前はダメなんだ」ではなく、「あなたの〇〇の部分を改善した方が良い」。人格を否定するのではなく、スポットライトを当てるべきはあくまでも誤った行動。

⑤思い出し叱りはダメ

「そういえば先週もこんなことがあったよな」過去を思い出し叱るのは禁じ手。タイムリーにその場、その場で叱ることが反省を促し、次の失敗を防ぐこととなる。

鈴木係長は、指導を受けた効果的な褒め方・叱り方を実践し、部下の成長を促すこととしました。

ポイント

   

部下の成長を促すために「褒める」、「叱る」のであり、「褒める」こと、「叱る」ことそれ自体を目的としてはならない。


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