■「人の確保」これこそ何よりも優先する経営戦略
少子高齢化、都市への人口集中、働き方の多様化により慢性的な人手不足が続いている。現在全国で130万人が不足。労働人口(15歳以上64歳以下)が一気に減少する2030年には650万人が不足する。これがいわゆる2030年問題。6年後には今の6倍、人が足りないということだ。いまから人手不足への対応を急がなければ経営そのものが成り立たなくなる。
■今後の市場の流れ
「10年ひと昔」から「1年ひと昔」と市場はすさまじく変化している。現場の実態、そして様々な指標をもとに今後、市場は次のように変化する。
①人口減少も滞留人口は増加
国内の人口は毎年減少する。しかし今年は3千5百万人も海外から日本に訪れた。それが2030年には6千万人を見込む。インバウンド効果で国内の滞留人口は拡大が続く。宿泊、運輸、飲食の人手不足は更に深刻になる。人材確保の争奪戦はこれからが本番だ。
②低価格 VS 高付加価値、高単価の二極化が加速
特上プレミアム、プレミアム、カジュアルと3つの食事コースがあったとする。これまでは真ん中のプレミアムが一番売れた。しかし今は特上プレミアムかカジュアルに流れる。これは完全な二極化。実質賃金が増えない中、消費スタイルが大きく変わった。だからこそ狙い先、どこをターゲットとするかが重要となる。
③特徴なき商品は容赦ない価格競争に巻き込まれる
工場の生産キャパは余裕がある。しかし需要は減少している業界。右から製品を仕入れ、そのまま左に売る販売会社。このような業態、企業は競合が破綻するまで価格競争は続く。新商品の開発、一部、組み立てまで請け負う、などの付加価値戦略が急務となる。
④収益力高い企業に人は集中する
インバウンドの拡大、さらには労働人口の減少でこの先も人件費は高騰し続ける。それだけに生産性と収益力を高めなければならない。利益なき企業は設備投資もできず、賃金は上がらずで社員も去ってしまう。そんな企業に人が入ってくるわけがない。
■中途採用のポイントと戦力化の着眼
前提において頂きたいのは優秀人材は流通していないと認識することだ。いまは「人の確保」に軸足を置き、採用して鍛え上げる、このような思考が大切。過度な期待が本人のプレッシャーとなり、いとも簡単に去っていく。これまでの考え方を転換しなければならない。採用のポイントと戦力化の着眼は次の9点。
1.採用基準、期待値を思いっきり下げろ
そうでないと中小企業では、採用は不可能。極端なことをいうと読み書きができ、コミュニケーションが取れる人間ならば即、採用だ。そこにヤル気があれば言うことはない。採用担当者の意識改革も必要。いまは優秀人材の確保ではない。人のアタマ数確保である。
2.中途採用でも即、戦力にはならない
これまでだと中途採用は即、戦力であった。しかし、いまは状況が違う。ほとんどが前職で結果を残せなかった人間達だ。実際、戦力になるには早くても半年~2年はかかる。ビジネスマナーから、仕事への取り組む姿勢まで徹底的に基本を叩き込むことが肝要。
3.大手企業出身が必ずしも優秀とは限らない
誰もが知る名高い有名企業。そんな人材が入社した。いやが上にも期待は高まる。しかし、である。組織がしっかりしている大手企業の社員と中小企業の求める優秀社員は全く異なる。例えばメガバンクの支店長経験者より信金の支店長経験者の方が実務にめっぽう強い。
4.倒産企業、赤字企業出身者の共通点
もちろん人によって大きく異なる。しかし傾向として倒産、赤字企業は甘く、ゆるい人間が多い。「本当に前職で部長だったの?」と目を疑ってしまうケースもある。それ以外に最初入った会社の体質や一番長く在籍した企業風土の把握も今後のマネジメントに生かされるはずだ。
5.同業から採用のメリットとデメリット
同業で優秀だったから、必ずしも優秀とは限らない。特に営業職はそうである。企業風土が異なるので必ずしも一致しない。それに比べ関接部門は前職通りの実力が発揮できる。同業から採用のメリットは即戦力となる点だ。デメリットは業界を知りつくしているため、チャレンジ精神に欠ける。あと、思っていた企業イメージではなかったと、またまた同業に転職する人間も実に多い。
6.若手の転職者の思考回路はすこぶる甘い
だからといって採用するなではない。そのような甘ちゃんをどう育てていくかが重要だ。やはり「石の上にも3年」のことわざ通り3年我慢できない人間はメンタルも弱い。しかし、考え方を変えれば前職でそこを指導できていない可能性もある。若者の採用は第二新卒という位置づけで指導すべきである。
7.シングルマザーは本気で仕事に取り組む
やはり生活がかかっているので愚直で一生懸命だ。女性特有のきめ細かさや気配りも合わせもっている。それでも体力やメンタル面のフォローは必要不可欠。優秀な管理職の元で更なる成長が期待できる。
8.事業譲渡での人材確保
事業譲渡とは企業の一部の部門を顧客、社員ごと丸ごと引き受けるシステム。採用コストと即戦力を望むなら、むしろ安い買い物にもなる。しかし問題もある。譲渡された先の企業風土にマッチングするか、どうかだ。
9.採用担当を置く
本気で採用を強化したいならば専任担当者を置くことだ。そこそこの規模になっての兼務担当では業務が分散して結果が残せない。採用強化のツールづくり、ホームページ、動画、イベントへの参加まで。採用人数の目標を明確に設定すべきである。
■幹部は徹底して経営理念の浸透を図れ
色の違う様々な企業から集まった中途社員。まずは理念の浸透でベクトル合わせに力を注ぐことだ。経験があるがゆえに、ややもすればアレが悪い、何もできていないと不満のオンパレードとなる。もちろん前職の良いところは導入すべき。中途で管理職に登りつめた人間は視野も広く、将来の役員候補となる優秀な人材だ。
ワンポイントトーク
【人出不足は待ったなし!いま全力で「人の確保と戦力化」に取り組まなければ、経営は危機に瀕する!】