■環境、待遇を改善しても辞める社員は後を絶たない
緩く、甘い組織に生産性高い人材が育つはずがない。スポーツの世界もビジネスの世界も同様。厳しさの先に技術の向上や豊かさがあるのだ。そして時代の流れもある。若者の安易な転職が目立つ。ハッキリ言うが、新卒、中途採用にしても辞める前提で育てた方が企業にとっても、本人にとってもメリットがある。だからこそ短期間で育成し、そして戦力化すべきである。入社後、早い段階から収益に貢献。そして自らのスキルを磨き次のステージで頑張る。まさにウィンウィンの関係。合理的な思考も大切だ。
■仕事が合わない社員は早めに辞めてもらう
私の課長時代の話し。副社長のカバン持ちで客先へ行く道中。どうしても仕事が好きになれない社員がいるのですがどう対処したら良いのか、と尋ねてみた。「国吉君、その社員にとって不幸なことだ。本人のことを想い転職を勧めることが君の仕事だよ。」目から鱗とは正にこのこと。後日、個別面談でしっかり話し合った。そうすると違う道に進みます、とその社員は明るく答えてくれた。幹部は悩んでいる社員が今の組織で本当に成長するのかを真剣に考えていただきたい。本人の考え方や能力を勘案し別の道を勧める。これも愛情である。
■3年で稼げる人材に育て上げるポイント
幹部の人事評価に定着率が組み込まれている企業が多い。それが悪いわけではない。中には厳しい指導で離職すると評価が下がってしまうと疑心暗鬼になる幹部も存在する。そこは人に対する根っこの考え方が最も重要だ。「幹部自ら熱の入った仕事」「育ってほしいと想う真の愛情」この2点があれば厳しい指導こそ稼げる社員へと変身する秘訣なのだ。日常業務における早期育成、早期戦力化のポイントは次の8点。
①部下の成長項目を具体的に褒める
部下が目標達成した。事前準備、具体的提案、人間関係の構築と明らかに進歩、成長がある、優秀な幹部はその「成長」を取り上げ、そして笑顔で褒めたたえる。目標達成よく頑張った。このような抽象的表現では成長が加速しない。どこが変わったのかを明確にすることだ。
②新人、若手に楽な仕事を与えるな
不動産業界で急成長真っ只中の〇ー〇〇ハウス。すさまじい営業力で有名だ。新卒内定段階からアルバイトで実践営業を学ぶ。内定から一年経過した入社式がある4月には立派な営業マンと育つ。入社した段階で競合他社と比べて雲泥の差がつく。そのやり方に否定的な人間もいる。しかし業績はスゴイの一言。いまや売上高1兆3千億円、営業利益1400億円。新人、若手に楽な仕事を与えては成長しない。泥臭い仕事を与えてこそ基本が身につき一気に成長する。
③考え方、気づき、行動の重要性を教え込め 考え方とは仕事を通して成長したい。他責にしない。顧客ファーストの精神。気づきとは「箸の上げ下ろし」つまらぬことを口やかましく小言を言うことだ。気づきのレベルが高いと的を得た提案で顧客の心をつかむ。現場の改善やコストダウンなどのアイディアもどんどん出てくる。行動とは打てば響く。そして量をこなすことだ。「量から質は生まれる」量をこなし体で覚えた仕事は実践にめっぽう強く稼げる人材だ。その3つを兼ね備えた人間は誰から見ても魅力がある。
④事前準備と行動計画を徹底指導せよ
10年選手でも伸びない人間は何年たっても伸びない。意欲も低く事前準備と行動計画に緻密さがない。新卒で半年、中途で一か月もあれば、手抜きをしている10年選手を実力、実績で上回ることは決して珍しくない。事前準備とは顧客を知る、取引状況の確認、訪問目的、必要な資料の準備。行動計画とは週末、翌週の計画がしっかり入っているかどうかだ。
⑤部下の性格、器を認識し最大限の力を引き出せ
戦力化を目指すにはその人間に合った指導が必要。例えばプラス面の性格として、積極的、思考力が高い、社交的、素直、きめ細かい。マイナス面の性格として、プライドが高い、逃げ癖がある、そそっかしい、暗い、メンタルが弱い。器とは仕事の量や質をクリアできるレベルを幹部が認識することだ。誰もが大谷翔平にはなれない。そこを汲み取ったマネジメントこそ稼げる社員へと導くことができる。
⑥指示したことが出来ていなければ目の前でやってもらう
指示した内容の重要性、仕事の優先順位を全く理解していない。すみません、忘れてました、すぐやります。と部下は答える。しかし、信用してはいけない。業務内容次第では幹部の目の前でやらせることだ。顧客への電話対応、見積書作成、提案書など幹部の監視の元でやっと行動に移す。人は信用しても人の行動はチェックせよ。これくらいは出来る、やっているものと信じると大惨事を招く。マネジメントの原則は性悪説にある。
⑦小さな目標を与え続け、期限には厳しく対処せよ
早期育成、早期戦力化に最も必要なことは小さな目標を与え続けることにつきる。アポイントを多く取る。訪問件数が一番。見積り依頼が増える。そして受注件数がチーム随一、という具合だ。いま出来ることを徹底継続すると、大きなことを成し遂げる人材に成長する。そして幹部の指示は全て期限付きが原則だ。期限のない仕事は中身が薄く生産性が上がることはない。
⑧会社を背負う優秀な社員は決して辞めることはない
去っていった人間で、その後活躍した人間は数えるくらいしかいないはずだ。だからこそ、辞めることを恐れない厳しい指導が必要となる。中小企業ではただでさえ人が入ってこない。正直、頭数の問題もある。しかし、そこも工夫することで何とかなるもの。逆に一人当たりの生産性が向上するキッカケにもなる。
■幹部は次代のリーダー育成を常に心掛けろ
部下10数人をまとめ大きな利益目標に果敢にチャレンジしたころ、まだ20代半ば。決して能力があった訳ではない。それより気合と根性、そして意欲、やる気の勝負だったと振り返る。よくよく考えるとあの人みたいになりたいと思える上司先輩がいたものだ。人材育成とは一勝九敗だ。少数の優秀な社員を育ることに重きをおく。辞めていくことを前提に3年で稼げる人材に育て上げる。これもまたマネジメントであり経営なのだ。
ワンポイントトーク
【リーダーは、稼げる社員になるまでの「育成計画」を策定せよ。それが、定着率向上と早期戦力化につながる!!】