■5月以降の経営環境はこう変わる
世の中の変化が超高速化している。そのため、打ち出す戦略も月単位で考え、朝令暮改の精神で取り組むことだ。5月以降の経営環境のポイントは次の3点。しっかり押さえ、戦略や施策に反映していただきたい。
①円安は年内に130円近くまで進行する
最大の円安要因は国力の低下だ。少子高齢化、産業構造の改革遅れ、内向きな政策。ビジネスでは鎖国国家のように映る。アメリカの利上げによる金利差でドルを買い円を売る。日本の輸出企業も今や海外移転が進み、円安の恩恵を以前ほど受けない。資源の少ない日本は輸入に頼る。円安で物価が上がり消費を直撃する。
②中国の都市封鎖(ロックダウン)は長引く
ゼロコロナ対策を取り続ける中国。工場は稼働せず、物流も機能せず。なにせ物が日本に入ってこない。秋には5年に一度の共産党大会がある。三期目を狙う習近平首席にとって、コロナ感染者拡大は大きな痛手。どんな手を取っても押さえ込みにかかる。
③これからが大倒産時代
昨年の倒産件数、負債額は史上最少となった。コロナ禍で補助金や無利子、無担保による政策が巧妙した。しかし、これからはそうはいかない。猶予されていた返済が始まる。コロナ禍で生き延びても、コロナ禍が落ち着けばいよいよ倒産ラッシュが始まる。以上3点から
・価格転嫁 ・在庫戦略の見通し(持っている方が強い)
・代替商品の早期確保 ・与信管理の徹底
経営戦略の見直しが必要となる。
■リーダーがスーパーマンだと部下が育たない
ソフトバンク、孫正義。ユニクロ、柳井正。日本電産、永守重信。3社とも日本を代表する優良企業。しかし、弱点もある。それは後継者問題である。あまりにも力が強すぎて後継者がなかなか育たない。中堅、中小企業でも、全て一人で動き業績を上げるスーパーマン型リーダーも存在する。しかし、リーダーとは本来、部下を育て、部下の力を借り組織力で目標を達成することがあるべき姿だ。スーパーマンが去ったあとは、必ず業績は落ち込む。
■部下を「巻き込む」具体的手法
勢いある組織とはムカデ競争みたいなもの。どんなに速く走ってもついていけない人間がいれば、転んで前には進めない。結局、全体の足並みを揃え、いま持っている最大の能力を発揮することが真の組織である。部下を「巻き込む」具体的手法は次の8点
1.会社を好きになると部下の心に火がつく
愛社心が高い人間ほど心に火がつきやすい。能力がいくら高くても愛社心がなければリーダーの指示にイチイチ反発する。愛社心があれば心から動く。心から動く部下は上手に巻き込める。得意先や、友人に自社の悪口を言う社員も実際多い。会社を好きになるには理念への共感、本人の成長、リーダーへの尊敬の念が大前提になる。
2.目標達成のための本質的問題を確認せよ
工場の設備や技術、物流レベル、内部管理の処理能力とどこに問題があって、何が不足しているのかをしっかり検証することだ。営業が受注しても工場の品質が悪い。物流に遅配、誤配がある。伝票ミスも多発だとクレームとなり適正利益を確保できない。何より社員の士気が下がってしまう。ここで問題になるのがリーダーが「何でうちの社員はこうも能力がないのか…」そのなげく言動はすぐ部下にみすかされてしまう。これでは巻き込めるわけがない。
3.斜(はす)に構えている人間の本音を聞け
必ず組織には一人、二人いるものだ。愚痴、文句が多い。当事者意識がない。何でも他責にする。それでも見捨ててはいけない。完成された会社は一社もない。誰でもどこかに不満はある。それを真剣に聞き、本気でメッセージを送る。人は必ず変わる。そこまでトコトン指導しているリーダーはほんの一握り。斜に構えた人間が心を入れ替え、巻き込めたら、水を得た魚の様にはじめる。
4.決めたことを安易にフェイドアウトするな
「巻き込む力」があれば、常に目標、業績が一人ひとりの社員の頭に擦り込まれている。そして結果が出ると対戦相手に勝ったような喜び方をする。未達なら反省し再チャレンジを本気で目指す。最も、部下を巻き込めないパターンは決めたことがいつの間にかフェイドアウトしていることだ。最初は厳しいチェックが入る。しかし成果が出ない。いつからかその施策の話しが消え話題にもならない。やめることが悪いわけではない。やめる理由を明確に伝えることである。
5.会社は変わると、リーダーは熱く語れ
辞めていく社員の理由で多いのが、会社はいつになっても変わらない。もちろん本人の認識のなさ、甘さもある。優秀社員だと本当に大損害。巻き込むとは優秀社員の退社を防ぐ役割も担う。リーダーが「我々が会社を変えていくんだ」と強く思っているかが最も重要。社員から見て会社は変わったという実感は売上高と賃金が毎年伸び続けていることである。
6.苦しい時のリーダーの言葉で人は成長する
部下が厳しい局面にある、その時のリーダーの発する言葉が強くたくましい人を育てる。人を巻き込むには厳しくも温かい指導だ。組織として、作ってはならない人材とは逃げる、ごまかす、嘘をつくタイプである。厳しい時、苦しい時、一歩でも前に進むのか、それとも逃げる部下なのか。
7.部下の長所を見つけ出せ
優秀なリーダーほど部下の短所を見抜く。短所を見抜く前に、まず長所を見つけ出す努力をするべき。体が頑丈、時間は守る、いつも笑顔。整理能力は長けている。計算は正確。決して生産性の高い人材ではない。しかし長所を見つけ出し、それにふさわしい仕事を与えるのも「巻き込む」仕事だ。長所を思いっきり伸ばすことで短所は薄まっていく。
8.部下のアイディアをすばやく導入せよ
例えば新商品開発プロジェクト。部門の垣根を越え、プロジェクトが進む。完成された新商品。どこの誰より販売するのが、プロジェクトメンバーたちだ。事実、現場で日々悪戦苦闘する部下は様々なアイディアを持っているが、それを話す機会、場が限られているケースが多い。部下からのアイディアをしっかり聞き、まず出来ることから始める。これもまた「巻き込む力」である。
■「巻き込む力」は人材投資、研修が効果的
先のスーパーマン型リーダーは個人の能力は極めている。しかし、部下が頼りなく見え全て自分でやらないといけないという固定概念が強い。その思考を変えるには外部の研修が一番手っ取り早い。残念ながら人への投資を一番怠ってきたのが日本。先進国の中でダントツ最下位。なんとアメリカの20分の1。生産性が向上しない原因もそこにある。「巻き込む力」は組織を束ねる真骨頂。教育投資は業績向上の最大の戦略。同封の国吉道場をぜひおすすめしたい。
ワンポイントトーク
【リーダーひとりの一歩より、メンバー10人の一歩。メンバー全員を成長させることが真のリーダーだ。】
(株式会社経営支援センター 国吉拡)