■稲盛和夫氏の思考×キーエンスの企業体質=超高収益
昭和の経営の神様は松下幸之助氏。平成の経営の神様が京セラの創業者、稲盛和夫氏だ。「仕事の結果=考え方×熱意×能力。」「物心両面の幸福の追求」多くの格言を残しその影響を受け見事に高収益に変身した企業も数多い。一方、キーエンスは売上高経常利益率55%を誇り、国内トップの高賃金。商品の開発スピードと圧倒的な営業力で群を抜く業績を残している。もちろん目標達成についても、とてつもなく厳しい。その厳しさについていけず新卒も5年で半分程度が退社する。デジタル時代に入り変化のスピードが凄まじく速くなった。日進月歩なら秒進月歩(びょうしんげっぽ)の世界だ。その変化に対応できない企業がこれからどんどん淘汰される。
■小さな改善の積み重ねと社員教育の徹底
業務用酒販小売を経営するK社は本当にコロナ禍の3年間、苦しみに苦しんだ。27年に渡りご支援させていただいている先だ。コロナ禍でも雇用を守り、できることをコツコツと継続。この5月はコロナ前の2019年5月に対し売上高で112%、粗利益で135%、粗利益率も3.5%改善する。顧客は居酒屋を中心とした飲食業界がメイン。社員が増えたわけでもない。粗利益率の高い商品を1件、1件きめ細かく対応し販売する。1件あたりの配送額を一万円増やす。配送するメンバーの人間力を高め、遅配、誤配を撲滅する。日々の小さな改善を怠らず愚直に実践。その結果、大幅に収益力が高まった。もちろんコロナ前より利益は大きく上回る。圧倒的地域一番で残存者利益の恩恵を受けつつある。そのポイントが熱心な社員教育なのだ。
■デジタル時代の実践的業績向上策
変化のスピードがこれまでの10倍速くなった。売れ筋商品の短サイクル化。異業種からの参入。優秀社員の突然の低迷。デジタル化が進むと、このような現象が必ず起きる。それでも業績を上げ続けなければならない。その実践策は次の7点。
1.リーダーの考え方と行動で業績は全て決まる
古くは新人類、バブル世代。最近はゆとり世代、さとり世代と、その時代の若者をイメージした言葉が次々と生まれる。どの時代でもリーダーは、今の若いものは・・・と理解に苦しみ首をかしげる。そんな若者を戦力にするにはリーダーの仕事に向き合う姿勢、考え方、そして行動が全てだ。リーダーが誰よりも勉強し、そして誰にも負けない努力をすることだ。リーダーの仕事に向き合う姿勢こそ人が育つ風土を創り上げる。過去の成功体験に甘んじているリーダーが今の若い者は・・・と嘆くだけである。
2.考える社員の育成
業務に必要なスキルをシステムやデジタルツールが一気にやってくれる。利便性も高く間違いが少ない。その一方でデジタル頼みになると考える能力が低下する恐さも合わせ持つ。考えない社員が増殖するわけだ。実際、リアルでの顧客との価格交渉の際、その場で判断できず失注になったり、大幅な赤字受注になるケースも後を絶たない。考える社員の育成は部下からの相談や質問に対する対応も重要。うちの上司は頼りになる。相談、質問に対して的確な答えが返ってくる。逆にこれが考えない社員を育成することにもつながる。時には「君はどう思う?」「君ならどうする?」という具合に考えるクセづけをすることだ。
3.無駄な仕事の撲滅
アポイント無しでの訪問で担当者不在、いわゆる空振り営業。絶対に受注できない先へ一日かけ企画書つくる営業。仕様書をしっかり見ずに、これまで通りの作業、思い込みで不良品続出の現場。仕事にはこのような無駄が随分と山積している。デジタルで全ての無駄は取り除くことはできない。むしろデジタルや様々なツールを使いこなし、きれいに作品として仕上げてしまう。受注できないにも関わらずだ。無駄を助長してしまう一面もある。
4.行動を分析しデータ化することが本物のデジタル化だ
業績に直結するデータは実は社内に存在している。営業だと金曜日に翌週の訪問予定が平均5件だとする。それを10件まで増やす。その結果、売り上げがどのぐらい伸びたかを検証する。経験上、10%程度売上は伸びるはずだ。営業全員で日時を決め60分間アポ取りをする。営業とは統計学であり確率でもある。全員で100件のTEL→10件のアポ→3件の見込み→1件100万円の受注とする。すでに標準化されているため全員でやるとまさにその通りになる。これが実践統計学だ。新規開拓には絶対にこのような方程式が必要であり成果が確実になる。
5.デジタル時代だからこそ 「泥臭さ 」を磨き抜け
色々な経営者幹部の人たちと出会う。ときには自筆のお礼状をいただくことも少なくない。自筆だと心に残るし好印象だ。顧客とのやり取りもオンライン商談で対面での接点が少なくなった。その逆を突く。つまりデジタル時代だからこそ、お礼状であり、訪問強化なのだ。特に入社3年までの若手社員はコロナの影響でオンライン慣れがあり、対面に苦手意識が強い。キーエンスの訪問件数はライバルの5倍と言われている。デジタル化で営業が顧客と面談しない単なる業務になっていないか?よく考えて欲しい。
6.長所伸展法と短所改善法
船井幸雄氏は長所伸展法を提言してきた。長所を伸ばすことで生産性は向上する、という理論。その逆で私は短所改善法も重要と考えている。長所を伸ばす伸びしろと、短所を改善した伸びしろは圧倒的に短所を改善した伸びしろが高い点にある。これもリーダーの眼力が必要で人見て法とけの世界。将来、組織の中心となる人財に育てたいなら短所改善法も必要だ。弱さが目立つリーダーに強いリーダーシップは発揮できない。
7.感受性はデジタルでは鍛えられない。
感受性とは生まれ持った素質ではない。目標を達成する強い想いと危機感が感受性を磨く。アンテナの感度が高いのだそして感受性高い人間は人の心を読み取る名人でもある。顧客と何を話し、何を提案したら人間関係がグーンと近くなるかを即、読み取る。多くの知識をいくら持っていても、行動力が弱い人間は頭でっかちで理屈っぽく感じる。感受性が全く身に付かない。いつの時代でも実践に勝る強さはない。
■今こそリーダーのバイタリィーとチャレンジ精神が必要だ
儲からない企業、組織は本当に危機感のかけらさえない。そのくせ、批判だけは超一流。そんな共通点がある。7月に優良企業視察に伺う埼玉県越谷市に本社を置く株式会社マルヨシ。管理、仲介、売買を主とする不動産会社。一回り以上年上の小山社長のバイタリティーとチャレンジ精神、それこそ感性には驚くばかりだ。売上高も急伸。伸びている企業でも様々な課題もある。売上を伸ばしながら課題にもメスを入れている。熾烈な競争はこれからが本番。デジタル時代でも基本は変わらない。全てがリーダー次第で組織の未来が決まる。(株式会社経営支援センター 国吉拡)
ワンポイントトーク
【頭はデジタル、動きはアナログ。リーダーは両方を部下の特性、成長レベルに応じて使い分けよ!】