■トランプ大統領誕生で、より自立が求められる
アメリカ大統領選挙も予想に反してトランプ氏の圧勝に終わった。これで2期目。次はない。共和党はもはやトランプ党だ。高関税、国境の壁の建設、パリ協定からの離脱と法案可決は確実だ。益々、先が不透明になった。
いまや、アメリカがくしゃみをすると日本経済が重症となる。それだけ依存度が高いのだ。だからこそ国も企業も自立が求められる。政治家は企業を守ってはくれない。自分の会社は社員全体で守る。自分の給与は自分で稼ぐ。その強い意志が求められている。伸びている企業は強烈な営業力が武器。キーエンス、オープンハウス、ニデック(日本電産)がそうだ。活動量、提案力、顧客ニーズをくみ取った商品開発が圧倒的差別化となっている。その全体を束ねるのが営業本部長、営業部長なのだ。
■ポンコツ営業本部長(部長)では目標達成は困難
多くの企業に伺うと、「えっこれで営業全体を取り仕切る営業本部長(部長)か?」と思うこともある。言葉に説得力もリアル感もない。なるほどという突きさし、響き、重い言葉をあやつることができない。これでは、いくら部下に厳しい指導をしても「またか…」という雰囲気が周りに漂う。次の7点に心あたりはないか。自ら検証していただきたい。
1.そもそも無理な目標だと思ってはないか?
目標も、上からやってくれと頼まれごと程度にしか感じていない。営業本部長(部長)自らがそんなのできっこない、と心の奥底で思っている。その思考はあらゆる場面で垣間見られる。熱意も感じず、行動力も弱い。致命的なのは具体策に欠如している点だ。部下はそこを鋭く見抜く。トップからの厳しい指摘も、その場をしのぐ「頑張ります」のオンパレード。そんなポンコツ責任者は即交代した方が本人のためでもある。
2.目標達成までのあらゆる「不足」を把握していない
年間目標をイメージし、営業レベル、各拠点、部門の実力、商品の競争力、得意先の現状をしっかり頭に叩き込む。そこで前年の実績を当てはめる。危機感高い営業本部長(部長)なら、そこで目標達成の「不足」が脳裏に浮かぶはずだ。新規開拓、シェアアップ、新商品の売り込みと優先順位まで明確になる。それが浮かばなければ、全体を底上げし目標達成に導くのは到底無理。
3.進捗の集計係で最後は頑張れと気合い入れ
各部門、各店に毎日のように進捗を確認。そして、目標未達までの差額はキッチリ明確にする。それ自体はマネジメントで必要なことである。しかし、だ。そこで全てがストップする。最後は頑張れ、なんとかしてくれ、という有り様。なぜ、そのようなことになるのか。一つは、その部門、店舗の目標達成までのシナリオをリアルで描けていない。二つ目には主要得意先の売上状況や商品構成をデータ化できておらず、課題の発見が弱い。
4.トップセールスマンで終止。部下を巻き込めない
営業責任者は自らトップセールスを実践しても全体の目標達成には遠く届かない。大切なことは、目標達成に大きな影響を与える動きをしているかどうかである。一人で野球はできない。時には監督でありコーチだ。そして場合によっては4番バッターともなり、抑えのクローザーまで対応する。それに加え、部下を動かし、部下の力を借りて業績の向上を目指す。そのためには施策を明確に伝え、ピントの合った動きを指示することである。これこそ部下を巻き込むポイントなのだ。
5.ネガティブな話しばかりで、部下の士気は上がらず
危機感を促すのと暗い話しは全く異なる。危機感とは聞いている側が「我がごと」のように感じ、考え方や行動が劇的に変わる。「やりがい一流、収入一流」。根っこの考え方がそうであれば、厳しい話しもネガティブに感じることは絶対にない。「これでは給与は上がらないぞ」「賞与も支給されないぞ」部下が何くそと思い、意識と行動を変えるのか。それとも士気が下がり、意気消沈するのか。上に立つ人間の日頃の考え方と行動次第だ。
6.3つの「さばき」を実践できていない
マネジメントには3つのさばきがある。まず前さばき。これは準備段取りだ。次に中さばき。進捗確認や経過報告。いわゆるプロセス管理。そして、後さばき。結果が出るまでの具体的指導や行動のデータ化である。営業の世界あるあるがリストアップの名人だ。前さばきはターゲットを絞ったリストアップ。優秀な人間はここから明らかに違う。中さばきは一件一件、キメ細かい行動、商談チェック。後さばきは受注するまでの提案着眼と行動プロセスのデータ化である。3つのさばきがないと結果は上がらない。
7.自分だけが頑張っているつもり意識が強い
プロとは結果が全てだ。どんなにプロセスが良かろうと結果が出なければ、その立場を代えざるを得ない。部下が動かない、価格競争力がない、工場がクレームばかり・・・。言いたいことは山ほどあるはずだ。しかし目標未達は全て自分の責任。頑張っているつもり意識を捨て自責の精神を強く持たなければならない。
■営業本部長(部長)の職務
現場の総指揮官が営業本部長(部長)だ。自社の売上高の責任を全て任せられている最も重要な立場。改めて営業本部長(部長)の職務を6点に要約した。
①全社売上高、粗利益の目標達成
②経営戦略を各部門、各店に具体的に落とし込む
③短期1年。中期3年の戦略を描き、実行する
④己の動きがどうあるべきかを常に考え行動する
⑤新規開拓、新規事業、新商品の拡販を軌道に乗せる
⑥営業マンの底上げを目指し、次世代リーダーを育てる
■勉強、実践、努力、やり切る力、その全てが必要
全社で最も重圧を感じる職務が営業本部長(部長)だ。売上が伸びなければいずれ大リストラの断行か、淘汰される。物が良いから売れるのではない。売る力があると品質も改善される。元読売新聞社長、務台光雄の名言。「白紙でも売ってこい」と、その辣腕ぶりから販売の鬼と呼ばれた。そこから発行部数がグングン伸び、ギネスブックに認定されたほどである。それくらいの気概がないと目標は達成されない。営業本部長(部長)に告ぐ。目標達成は「あなたの仕事への熱意次第」という覚悟と責任を持って現場に挑め。敬具
(株式会社経営支援センター 国吉拡)
ワンポイントトーク
【営業本部長(部長)としての仕事は10点中何点か。点数が足りない部分を補い、常に目標達成する組織を創り上げろ!】