■売上至上主義から粗利益第一主義へ転嫁せよ
売上を伸ばして利益がついてくる時代は終わりを告げた。市場が縮小する時代は中身が重要。薄利で販売しても利益は上がらず、在庫、売掛金も増え経営リスクは高まるばかり。賃上げも出来ず、社員は去り、設備投資もできない。まさに負の連鎖。「給与はどこからもらう?」新入社員研修に必ず教え込む考え方。答えは「お客様」。ただし、財務的視点で言うと給与は「粗利益」からもらう。これが正しい考え方である。
■収益改革にウルトラCはない。コツコツ継続がカギ
先日視察した業務用酒販小売のK社。顧客は居酒屋を中心とする飲食店。そこの収益構造の改革が素晴らしい。指揮官であるリーダーは31才の若き専務だ。コロナ前の2019年と2024年の(1月~9月、9か月間の平均)比較をすると一目瞭然。まさに、目からウロコとはこのこと。業績は劇的に伸び圧倒的収益を誇るまで業績改善が図られた。コロナ禍では地獄の苦しみも体験した。しかし改革をコツコツ継続して断行。業種は違えども参考になるはずだ。コロナ禍前の2019年と比較して、①売上高は117%アップ、②粗利益率は3%改善、③粗利益額は137%アップ、④社員一人あたり粗利益額は月26万円増、年間だと312万円増、⑤人員数はほぼ同じ、⑥労働時間は15%削減、⑦一台あたり配送は120%生産性向上。小さな改善、大きな成果。コツコツ継続実践してこそ利益体質への最短であり最速。K社の実例から理解できる。
■利益の上がる体質転換への実践着眼
まずは幹部がしっかり自部門の現状認識を行い具体的改善策を掲げることからスタート。その改善策もキメ細かく個別に落とし込み、鋭く厳しい進ちょくチェックが必要不可欠。次の5点を幹部は徹底して頂きたい。
1.粗利益率にはトコトンこだわる
まずは売上の正体を幹部は的確に分析、見抜くことだ。メーカー、素材、サイズの変更。VE、VA提案の強化(安く効率的につくる)。薄利でも売上を伸ばすことで仕入れが下がり、報奨金制度もある。メーカー直送なら、多少低い粗利益率でもOKという判断もある。現状の売上高で3%粗利益率を改善すると最終利益がどうなるかを確認してほしい。
2.普段気にしない業務の数値化を図れ
何気なくこなしている業務改善が大きな利益につながる。例えば、配送の積み込み作業。K社はそこにもメスを入れた。積み込み時間を数値化し、短縮目標を設定。その結果、労働時間も大幅に改善。合わせて遅配、誤配の防止にも取り組んだ。ロスやクレームも減少し、顧客満足度も高まる。一石二鳥とはこのこと。営業だと、担当者不在の空振り営業。契約可能性が低い顧客へ時間をかけた見積り作成。分散した顧客訪問(通称ドライブ営業)。身近に収益改善テーマは山積している。
3.値上げ交渉と、値上げができなかった顧客への対応
多くの企業がいま、その問題に直面している。要求する満額値上げはなかなか厳しい。常日ごろの提案や人間関係が最大の決め手となる。「取れる受注価格の最高値」これこそが基本的な考え方だ。問題は値上げが満額できなかった顧客への対応である。もう一品、商品を提案する。在庫を持ってもらい配送頻度を落とす。支払いを手形から現金に変更する。利益体質に変えたいと強く想う幹部のマネジメント次第だ。
4.新規開拓は粗利益率が低下する。その後の提案が重要
競合より安い価格を提示しないと新規受注は難しい。しかし、それを推し進めないと売上高が10%~20%下がってしまう。大切なことは新規開拓は低粗利益率だと事前想定することだ。その代わり、その新規先に様々な商品を提案し、適正利益率に最後は帳尻を合わす。これを肉付け営業と呼ぶ。ワンランク高い鍛え抜かれた人材ならそう難しいことではない。
5.見積りチェックと納品後の粗利益( 率)を確認せよ
「値決めは経営」と京セラ創業者の稲盛さんはそう説いた。その言葉通りだ。顧客からの優先順位が高いほど、主導権が取れ、高い粗利益率となる。その値決めを最終決定するのが幹部である。見誤ると利益は取れず、逆に競合に奪われる可能性もある。そして見積りと実際納品後の粗利益額(率)チェックも必要。原価モレ、クレームによる値引き、と予想と異なるのは危機感と原価意識の欠如。そこをシビアにチェックし指導することで粗利益率は3~4%改善できる。
■理念実践主義経営こそ圧倒的速さで収益が改善する
K社視察の際、創業者の講演があった。「働くとは」「生き方とは」など、講話のうち80%以上がそのような根っこの話だ。結果として業績はついてくるという、シンプルな考え方に心底、共感した。理念を共有しベクトルを合わせる。そして顧客第一主義を貫く。そうすることで収益は大きく改善する。何よりも全社員一丸となって突き進むパワーには圧倒された。
ワンポイントトーク
【空前の大倒産時代がやってくる!幹部は徹底的に利益にこだわり、生き残る会社へと変革させよ!】