■「人が入って来ない」倒産。120と30の壁
「人出不足」倒産ではなく、「人が入って来ない」倒産の領域となった。東京ではいまや、年間休日120日、新卒初任給30万円となりつつある。地域、企業規模によっては「そんなこと実現不可能」と考えていたら大きな間違い。あっという間にそれが全国のスタンダードになる。実現できない企業は「人が入って来ない」状態となり経営の継続が困難となる。だからこそ生産性を高め魅力ある企業に変身しなければならない。そのキーを握るのが「稼げる営業部隊」である。コンサル会社を起業して30年。その経験から収益力高い企業は圧倒的に強い営業部隊を構築している。
■営業戦略とは真似る、付け加える、圧倒的スピードだ
中小企業では差別化戦略は難しい。必ず競合他社が現れ、同じやり方を展開する。業績が順調であっても常に改良、アップデートを図ることが肝要。営業戦略とはいたってシンプル。いま伸びている企業をリサーチし、それを真似る。そして、強みを付け加える。最後は圧倒的スピードでオセロゲームのようにシェアを一気に奪い取る。「仕組みで勝ち、人で圧勝する」そのやり方はいつの時代でも変わることはない。
■稼げる営業部隊の創り方
「どのような戦略か?何を売るのか?」よりも誰が営業の責任者であるか、が最も重要。営業部隊の風土、体質、社員の意欲は全てが営業責任者で決まる。令和版、稼げる営業部隊の構築は次の8点。
1.誰が見ても「強烈」と思える組織を創り上げろ
昭和の「強烈」とは軍隊式。令和は全く異なる。①理念の浸透②顧客第一主義③やり切る力を言う。その3つが全員に徹底されるとすさまじいパワーを発揮する。顔はイキイキ、眼は輝き、動きはキビキビ。スマートな営業は換金力、稼ぐ力に欠ける。ドロくさい営業ほど己の実力が付き、収益に貢献する。
2.圧倒的な活動量 M&Aで有名なニデック(旧日本電産)創業者の永守会長。50社以上のM&Aを成功させ、いまや2兆5千億円の売上を誇る高収益企業。自らM&A先に乗り込み、「これまでの2倍の活動量を実践せよ」と発破をかける。この程度のことで業績は上がるのか、赤字会社の営業は思うそうだ。しかし、一年後、見事に黒字、それも過去最高益となる実例が多い。どんなに技術力があっても活動量が弱ければ業績は低迷する。
3.ポンコツベテランリーダーより若手を抜擢せよ
「名選手名監督にあらず」トップセールスが人を束ねるリーダーになれるかと言えばそうでもない。「年功序列リーダー」これもまた入社年数でリーダーが務まるかと言えばNOである。頭が固く、過去の成功にあぐらをかくベテランより、若手を抜擢した方が業績に貢献するものだ。若手抜擢の手順としてまず、3~4人を束ねるユニットリーダーからスタートする。素直で目標達成意欲の高い若手は成長速度が驚くほど速い。自らの数字にもユニット(チーム)の目標達成にもトコトンこだわり、次のステージに登りつめる。
4.人が足りないと嘆くリーダーは言い訳の達人
退社が相次ぎ、営業人員が減少。リーダーは人員不足を理由に目標達成を諦める。よく見かける光景だ。これは全てリーダーの責任。面倒見が悪い。成長を促す指導が出来ていない。会社の明るい未来を熱く語れない。そのくせ、「最近の若者は何を考えているのかわからない」と吐き捨てる。その人間の特性をつかみ、昨日より今日、今日より明日と少しずつ成長を促すことだ。
5.短納期、小ロット対応で高粗利率となる
これらは製販一体となり取り組むテーマ。磨き抜くことで競合に比べ頭一つリードする。年商15億円のA社は部品関連メーカー。業界的にはいわゆる斜陽産業で市場も大幅に縮小。競合のほとんどが赤字に転落する中、売上高は10%伸び、経常利益率も15%に迫る。まさに一強百弱、残存者利益の恩恵を大いに受けている。その戦略こそ短納期、小ロット対応、高品質だ。
6.「基本の徹底」度合いで収益体質が変わる
挨拶、身だしなみ、気配りといった躾。報連相から事前準備といった基本業務まで。基本がどこまで徹底しているかで収益力に大きな差が生まれる。このくらいのことは出来ている。うちのレベルはそこまで低くない。実際はというと虚偽の報告があり、表には出てこないトラブルをかかえているケースもある。ウソを隠すためのウソ。その扉が一つ開けばとんでもない事態になっている。
7.レスポンスの遅い営業は要注意
社内で出来ていないものは社外でも出来ない。レスポンスがそうだ。とにかく遅い。これは遅くても大丈夫。報告しなくても自らで解決する。中には大事な顧客からの頼まれごとを、こともあろうにすっかり忘れていたケースもある。スピーディなレスポンスとは意欲、ヤル気の証明であり、顧客からの信頼を勝ち取る絶対条件だ。是正するにはリーダーによる一日5回「あれ、どうなっている?」と確認するしかない。
8.その他、収益力を高めるためにやるべきこと
優先順位をつけキメ細かく実践していただきたい。
①「価格転嫁」価格転嫁できない企業は当然ながら収益力が落ちる。値上げは粗利益率改善の絶好のチャンス。常日ごろの顧客との関係性が決め手となる。
②「稼働件数の拡大」業績向上の安定は稼働件数、毎日の伝票枚数が重要。新規開拓と深耕の実践が収益力を高める。これをチェックするマネジメントが必要不可欠。 ③「消耗品、アフター商品の売込み強化」メイン商品は売上を創り消耗品、アフター商品で粗利益を稼ぐ。どの業界でもメイン商品だけでは粗利益確保は出来ない。
③「消耗品、アフター商品の売込み強化」メイン商品は売上を創り消耗品、アフター商品で粗利益を稼ぐ。どの業界でもメイン商品だけでは粗利益確保は出来ない。
■営業力強化をあきらめた組織に未来はない
人に依存しない。仕組みで業績を上げる。理想ではある。しかし、30年この仕事を通し言えるのは、世の中、そんなに甘くないということだ。仕事を通し成長する。顧客第一主義に徹する。全社員がこのような思考を持たない限り、市場からはじき出されてしまう。とにかく人を鍛えて鍛えて鍛えまくれ。目標達成→高収益→待遇改善→納税で社会貢献。これ以上の善循環はない。
株式会社経営支援センター 国吉拡
ワンポイントトーク
【利益の源泉は、商品、戦略の差よりも営業力の差。営業力を磨き上げ、生き残る企業を創り上げろ!!】