<strong>セルフコントロールとしてのストレスマネジメント</strong>

セルフコントロールとしてのストレスマネジメント

2023/02/09

セルフコントロールとしてのストレスマネジメント

厚生労働省が発表している精神障害による労災補償の請求件数は直近の令和3年度で2,346件。年々増加し、過去5年間で1.5倍となっています。過労死等防止対策促進法が2014年に制定されたものの、精神障害者数の増加を食い止めることはできていません。また、上場企業に対して行われた、ある民間会社の調査によると、心の病により1か月以上休職している従業員がいる企業の割合は70%を超えています。

   「社員の心の問題を克服するためにストレスの無い職場環境をつくりましょう!」このような声をよく聞きます。一見すると、非常に良い取り組みのように思えますが、実はピントのズレた施策です。なぜなら、①ストレスの中には自分を奮い立たせ、自身の成長につながる良いストレスも存在しますし、②ストレスの原因は個人によって様々であり、全てのストレスを取り除くことは不可能であるからです。では、組織を上げて、まず取り組むことは何か。それは、ストレスと上手く付き合い、対処していくストレスマネジメントの考え方・手法を浸透させていくことです。今回はストレスマネジメントについて解説していきます。

「また休職の申し出ですか・・・」

    食品卸売業A社、人事課の山田課長のもとに報告があがってきました。「営業部の2年目社員より、休職の申し出がありました。心療内科より診断書を交付され、提出を受けたのです。休職を認める方向とします。」

    実は精神的疾患による休職の申し出は今回が始めてではありません。ちょうど1か月前にも配送の部署の3年目社員から休職の申し出があり、該当の社員は現在、休職中です。山田課長は考えます。「人手不足の中、個々の社員に負担がかかっているのは事実だが、まずはセルフコントロールの手法を全社員が理解することが必要かもしれない・・・」

解説 

    隠しもしませんが、私は20年近く前の前職時代、3カ月以上ほぼ眠りにつくことができない、不眠症になった経験があります。身体は疲労困憊、精神的にも限界。不安、恐怖、焦り、罪悪感、など様々な負の感情が渦巻いていたのをいまでも覚えています。残業、過労などの負荷がかかっていたかというとむしろ逆です。大企業であり、労働環境は守られていました。待遇も恵まれ、残業一切無し。数字に対するプレッシャーは皆無。上司も非常に気にかけてくれていました。それでも私は不眠症になりました。それはなぜか、ストレスをコントロールする手法を理解しておらず、ストレスを自身の中でどんどん大きくしていく負のスパイラルに陥っていたことが原因であろうと感じます。

1.良いストレスと悪いストレス

 慣れた業務、負荷のかからない環境(コンフォートゾーン)で人が成長することはありません。120%の力を出せばできる環境・業務(ラーニングゾーン)で人は成長していきます。※ノエル・M・ティシー教授が提唱する「能力開発の概念」

    つまり、適度なプレッシャー(ストレス)は仕事において必要なのです。

2.自身の性格傾向を理解する

  性格診断のツールは様々存在しますが、学術的に認められているのはTA(交流分析)のみと言われます。TAでは、自身の価値観、強み・弱みに気づき、客観的な指標を理解することができます。自分がどのような場合プレッシャーを感じ、逆にヤル気があふれているかを知ることは行動の指針に役立ちます。

3.リラックスの手法

①心と体はつながっている

    笑顔は重要。表情筋を動かすことで脳に「快」の伝達を送ることができます。また、運動などで体を動かすことも気分を高揚させる効果があります。

②呼吸法

    鼻から息を吸い、ゆっくりと口から空気を吐き出す腹式呼吸は気持ちを落ち着かせる効果があります。逆に緊張状態では浅く速い呼吸となっています。

③アファーメーション法

 「私はできる、成功する」など自分を励ます言葉を口に出し、ダメージを克服することは可能です。重要なことは声に出すこと。自身の声は自身の耳を通して直接脳に働きかけることができます。

4.ABC理論

    心理学の権威であるアルバート・エリスはこのように結論づけました。「思い込みが自身を苦しめる」と。いままで培ってきた価値観、重思い込みによって信念が築かれ、結果に結びつきます。ストレスを感じた時、自身の信念、例えば「〇〇は絶対にしてはいけない」などの価値観を疑ってみることも時には必要となります。

5.リフレーミング

   「ツラい」ではなく、「勉強になる」。「厳しい」ではなく「熱心」。など物事を肯定的にとらえることをリフレーミングと呼びます。ネガティブな感情が沸き上がった時、一度立ち止まり感情を書き換えること、つまり幸か不幸か自分で決めることができるのです。

山田課長は早急に管理職を集め、管理職がおさえるべきストレスマネジメントの研修を行いました。まずは部下の様子を観察すること、そして、セルフコントロールの手法の落としこみを実施させました

【ポイント】
ストレスを取り除くことはできない。ストレスとうまく付き合い、対処していくストレスマネジメントをまずは全社員が理解せよ。

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