■広がる業績格差と更に厳しさが増す経営環境
日経平均株価が3万3千円を超え、30年ぶりの高値をつけた。景気が回復傾向という論調もある。しかしこれは、全く実態と異なる。むしろリーマンショック以来の厳しい経営環境だ。いまの日本の株高要因は①「東証によるPBR1倍割れ」に対する指導要請 (増配、設備投資、自社株買いで株価上昇)。②円安効果で来期3月期が増益予想。③欧米の利上げで世界経済が悪化。④著名投資家、ウォーレン・バフェット氏による日本株への投資。消去法で日本の株価が上昇したに過ぎない。決して長続きはしない。それどころか、コロナが第5類になった途端、これまで以上に業績格差が広がった。大企業と中小企業、地域一番店と二番、三番店。優秀リーダーの存在とダメリーダーの存在。これから更に格差は広がり厳しい経営環境となる。
■企業数270万社が半分になる
現場ではすでにその兆候は起きている。住宅、不動産業は駅近の土地、建築資材コストが大きく上昇。価格がこれまでより10%以上跳ね上がり、販売に大苦戦。キャッシュ化するために、値引販売→赤字→金融機関からの見切り→倒産。その流れがあちらこちらで見られる。27年後の2050年現在1億2450万人の人口が9500万人と3000万人減少する。それに伴い企業数も激減。生き残りのサバイバルはすでにスタートした。企業存続のキーマンは何と言っても指揮官であるリーダーだ。100年に一度の変革期を乗り切るためのリーダーによるマネジメントポイントは次の8点。
1.リーダーとしての自覚と責任を認識せよ
リーダーとは組織(チーム)の目標を達成することが絶対条件。リーダー自身が結果を残しても組織(チーム)として目標未達なら全く評価されない、ゼロ点だ。仮に部下が未達ならその差額分を全てリーダーが背負い、自らでやり切る覚悟が必要。そんなスーパーマン的リーダーは現実、難しい。だからこそ人育てである。自分はやっています。部下がダメなんです、では通用しない。
2.いつの間にか他責 (原因他人論)になってないか
真面目、誠実、一生懸命。しかし目標未達。これもまたリーダーとしてゼロ点である。しかし、そんなリーダーは自分は熱意を持って仕事に取り組み、そして部下に接している。しかし結果がでない。これはもしかして商品が悪いのでは?。価格が高いのでは?。品質に問題があるのでは?。知らないうちに他責体質におちいっている。そこに気づき意識を変えなければ目標達成はありえない。
3.商品と顧客のミスマッチはないか、全リーダーで考えろ
営業、開発、マーケティング、工場と各部門のリーダーがいまの市場を鋭く分析することだ。それによって顧客、ターゲット先、価格、販売方法と全てが変わってくる。一番まずいのは商品と顧客のミスマッチだ。それを防ぐには各部門のリーダーが膝を突き合わせ、ときにはけんけんがくがく、徹底した議論が必要となる。そこの議論が弱いと各リーダーが責任のなすり合い合戦になる。もしそこに問題があるとするなら、すぐにリーダーによる対策会議を実施すべきだ。
4.部下に具体的指示を本当に与えているか
一人ひとりの部下に今日の商談や業務への結果を出せるリーダーによるアドバイスが大切。そのためには部下全員の現状の商談状況や、受注までのシナリオをリーダー自身が描いていないと成果は上がらずだ。頑張れ、君ならできる、自信を持て、というような抽象的表現は前向きにはなるが残念ながら結果は出せない。部下が知りたいのは頑張れではなく、結果がでる具体的頑張り方なのだ。
5.リーダーはやり切る、妥協せず、手を抜くな
超高収益企業のキーエンスに関する書籍が話題となっている。読んでいると、これってうちでもやっているような…という内容が実に多い。決められた訪問件数、報連相の徹底、ロールプレイング…等々。ただし、そこをリーダーが徹底してやり切っている、手を抜くことは決してない。そこに収益の大きな差がある。「100年に一度の転換期」。それを突破し生き残るには「凡事徹底」あるのみ。当たり前のことを当たり前にやり抜く組織風土にある。
6.部下の能力はリーダーの指導で全て決まる
コンサルティング先ではリーダーから部下の現状をヒヤリングした上で現場に入る。リーダーから見たら意欲、能力に疑問符がつくことが多い。しかし現場同行すると、意欲はある。そんな人材に遭遇するケースが多い。共通しているのはニーズの引き出し方、事例の出し方といった、ちょっとしたことだ。ひとつ成功体験を積むと、もの凄く成果を出せそうな人材がウヨウヨいる。やはり、リーダーによる部下指導の問題。部下の潜在能力を顕在化することもリーダーの仕事だ
7.自分の財布からお金を出している意識を強く持て
これが原価意識に最も必要なスキルである。仕入部門ならいかに安く購入するか。営業だと受注できる最高値で値決めをする。工場はクレームを防ぐ。この思考を部下に浸透させるのもリーダーの日々の仕事ぶりで決まる。原価意識を持てと部下に発破をかける。しかし自分はというと電車で行ける先でも平気でタクシーに乗る。安売りを誰よりもする。こんなリーダーのもとでは原価意識の高い部下が育つことはない。原価意識の低いリーダーの本音は会社からいくらでもお金は出るものと思っている。自分の財布からお金を出す意識なら「生き金」となり、かけたコスト以上の成果が出る。
8.朝礼は戦略会議、夕方は成果確認面談を実施せよ
マネジメントで重要なことは「今」である。3年後のご馳走より今日のパンだ。朝礼もやり方によっては業績に大きく貢献する。一人ひとりの1日の行動予定と求める成果を確認する。そのときの部下の顔色は真剣そのもの。緊張感ただよう空気。夕方は朝礼で確認した実践項目を個別確認。そこに対しリーダーはアドバイス、フォローを入れる。まさに今日決めたことをやり切る「一日決算」。収益力高い組織のリーダーはこのようなマネジメントを徹底している。
■リーダーは自分、家族ファースト主義では務まらない
人柄は良い、しかし厳しいことが言えない。気合いは入っている。しかし具体的指示が出せない。自分の結果は出せる。しかし組織の底上げはできない。現場は忙しい、しかし家の用事といってはささっと帰宅する。全てリーダーとしては失格だ。まず顧客ファーストである。心底、顧客の要望に応えたい。その姿勢が信頼という非価格競争につながる。そして、組織ファーストだ。組織として何をどうしたら目標に届くのかを考える。そうすると部下一人ひとりが気になって、気になってしょうがない。部下の実力と現状を把握し具体的指示が出せる。いまの激動期にふさわしいリーダーとは①誰よりも会社のことを考えている。②目標達成に執念を持っている。③部下一人ひとりの成長を本気で考えている。④誰よりも勉強し、行動力がある。⑤部門を預かるミニ経営者としての責任と自覚を強く持っている。あなたはどうか?。(株式会社経営支援センター 国吉拡)※9月より開催の国吉道場は残り2席です。申し込みはお早めに。
ワンポイントトーク
【リーダー自身が、最後まで諦めない。徹底してやり切る。その姿勢が部下を鼓舞し、チームの目標達成に繋がる】