■悲観的に考え最悪を想定。そして毎日が不安たれ
このような思考を持つリーダーがいま業績を大きく伸ばしている。変化がこれだけ早くなると想定以上のことが起きる。「悲観的に見通す。最悪を想定する。毎日が不安だ」そんなリーダーは想定するキャパがとてつもなく広い。つまり想定外が少ないのだ。マイナス思考に聞こえるが、そこから先が優秀リーダーの真骨頂。これでもかというくらい、リスクを想定した対策を立案する。何よりも実行力が半端じゃない。だからどのような環境であっても結果が残せる。思考は悲観的だが緻密な計画を立て行動は極めて楽観的だ。
■コロナ禍におけるリーダーの危機管理の実践方法
危機管理とはどのような環境であっても、目標を達成するという強い信念が必要だ。学問でもないし、すべてをマニュアル化するのも難しい。目標達成を阻害するもの、不足しているものを事前に認識し素早く手を打つ対応力である。リーダーが日常業務において危機管理の要所を押さえ目標を達成するポイントは次の10点。
1.心の乱れは基本の乱れ。基本の乱れは業績の乱れ
挨拶、身だしなみ、言葉づかいから常日頃の部下の言動にリーダーは目を光らせることだ。モチベーションが低く、会社に対する不満の心が現場でのミス、ロスに直結する。心が乱れていると、基本がおろそかになり、品質、サービスに大きな支障をきたす。最終的には業績も乱れる。上に立つ人間はマインド(①理念実践②愛社心③共感④気づき⑤感謝)を時間をかけ指導し、心の底まで落とし込むことだ。
2.部下一人ひとりの動きを把握せよ
飛行機での出張は原則前日移動が基本だ。出発前の機材故障、悪天候、空路の混雑によって大幅な遅れがあるからだ。部下の行動計画にも厳しいチェックが必要。金曜日には翌週の計画が立てられ、しっかりアポイントが入っていなければならない。得意先別の資料や提案商品が事前準備されているか。訪問効率はしっかりしているか。空振り営業はないか。そこのマネジメントもリーダーの危機管理力である。
3.小さなクレームを重く受け止めろ
顧客からのクレームは商品開発のヒントにもなるし、顧客を失うリスクともなる。リーダーはその小さなクレームに真剣に耳を傾けるべきである。クレームは担当本人に最初は柔らかい口調で顧客から伝えているはずだ。それがどうも改善しない。いくら言っても変わらない。そこで上司に直接、顧客からクレーム連絡が入る。大問題は、担当本人がそのクレームを「大したことではない。自分は悪くないと」本気で思っている点だ。これでは大事な顧客を失うことになる。
4.いまの顧客、人材、商品、やり方で目標に届くのか?
単純明快ですごくシンプルなことである。顧客の数が不足していたら新規開拓。モチベーションが低い社員が多ければ、リーダーによる動機づけ。商品に魅力がなければ商品開発。やり方が間違っていたらより良い方向に是正するマネジメント。しかしその単純明快、シンプルの裏には圧倒的な「考える力」と「やり切る力」が必要だ。その圧倒的な差が危機管理の差であり業績の差となる。
5.自社の成長過程を研究せよ
最も参考になるのが実績データだ。例えば何件訪問したら見込先がどの程度になる。そしてそこからの受注を逆算すると、受注率をはじくことができる。危機管理力の高いリーダーはこれまでの実績データを分析し成功までのプロセスを数値化している。自社の成長の歴史にも注目したい。創業からどの時期に売上高が伸び、その時の施策はどうだったのか?
新商品が売れた。新しい拠点が開設された。新工場が稼働した。自社のこれまでの成長過程を知ると今後の戦略構築がより明確になる。
6.目標達成と目標未達の考え方
上期は目標を大幅に達成。年間目標に対して大きく貯金ができた。危機管理力に長けているリーダーはその貯金を下期に持ち込むことはしない。逆に上期が未達。その未達の借金は下期にプラスアルファとして加算する。貯金は持ち込まずに借金は当然のごとく加算する。その思考と実践がたくましい社員を育て、業績も安定する。
7.経営指標を危機察知指標として活用せよ
まずは組織経営に必要な経営指標を徹底し頭に叩き込むことだ。
①粗利益率の改善→商品力の向上、値上げ効果
②受注、契約率の向上→目標に対する執念、提案力向上
③与信管理の徹底→利益意識の高まり、情報収集力
④一人あたりの粗利益→生産性向上、優良顧客の存在
(メーカー社員一人あたり130万円以上/月、販売会社社員一人あたり100万円以上/月)
⑤在庫回転率→顧客ニーズの把握、在庫過多防止
(在庫回転率=売上原価/平均在庫金額)
8.目標達成でも数字の正体を鋭く分析せよ
原材料高、円安であらゆる業界で値上げラッシュが続いている。ある企業では大幅な値上げを実施。売上高も前年対比110%と大きく伸長。しかし商品の出荷ベースは80%。見た目の数字は良く見えるがシェアは落としている。これは完全に追い風参考記録であり、決して実力ではない。
9.分散とリピートは最強のリスクヘッジ
エリアの分散、顧客業態の分散、商品アイテムの分散、ネット販売等の売り方の分散、売上構成比の分散、社員の年齢構成の分散。分散は有事にその強さをいかんなく発揮する。そしてリピートだ。一度取引したら毎月売上が読める。これをセコム型ビジネスと勝手に名付けている。セキュリティー事業部の売上高は5600億円、取引件数が360万。1件あたりの年間平均取引額が15.5万円だと1か月あたり約1.3万円。リピート率は公表していないがおそらく95%以上。1社あたりの取引額が分散し、顧客数も多い。そしてリピート率も高い。つぶれない企業の代表格だ。
10.30%速くを実現しスピード経営を加速する
月間なら10日で見通しを立て、20日で読み切り、残りの10日は翌月準備。1年なら9ヶ月で年間売上目標を読み切り残り3ヶ月で来期準備。回収サイトも現状60日だとすると創意工夫で45日へ短縮しキャッシュ化を高める。その他にも見込みから受注まで30%の期間短縮。納期の30%短縮。速さとは危機感のたまものだ。そして速さとは企業体質、風土であり、最強の差別化戦略。スピード経営を実践することで未来の戦う準備ができる。何よりも無駄が排除され、コストが下がり利益の出る体質となる。
■リーダーはビジョンと不安を同時に語れ
これからのリーダーは相反した二極の軸を持つことでバランスが保たれる。「大胆と細心」「情と理」「望遠鏡と顕微鏡」「想いとソロバン」そして「ビジョンと不安」だ。ビジョンを熱く語る。これは部下をやる気にさせる。それだけではまだまだ自分ごととは思わない。不安を強烈に煽ると当事事者意識が芽生える。生活がかかっているからだ。残念ながら多くの社員がまだまだこのレベルである。
(株式会社経営支援センター 国吉拡)
ワンポイントトーク
【改革はリーダーの危機管理力から生まれる。現実を直視し、3歩先を見据えて行動せよ】