ある経営者より相談がありました。「会議を開いても全く意見が出てこない。定例なので仕方なく出席している。頑張ります、と言っても口だけ。時間のムダだから開催しなくても良いのでしょうか?」会議は課題解決のために必要不可欠です。多くの上司が持つ会議への不満、そして多くの部下が感じている会議への不満は、正しい会議の進め方をしていないことが原因で生じています。今回も事例をもとに生産性高い会議の進め方について考えていきます。
ある会議の一コマ
食品卸売業A社、営業1課の会議の一コマです。田中課長は鈴木係長に6月より業務改善プロジェクト会議の運営・進行を任せることとしました。事前に当日の進め方は報告を受けていましたが、会議当日いざ横で運営を眺めていたものの、話しているのは係長のみ。全く、打つべき手や結論もまとまりません。会議終了後、次回の会議に向けての改善として、次のことを田中課長は解説しました。
【解説】
良くない会議の特徴は様々あります。列挙すれば限りありませんが以下のような項目が挙げられます。
①やらされ意識
②準備不足
③議論をする場ではなく、報告をきくだけの場
④意見、発言、質問が出ない
⑤終了時間が定まっていないためダラダラと長時間続く
⑥議論が脱線し時間が足りず、結論が出ない
⑦しゃべりすぎる参加者が存在する
⑧毎回同じ話に終始する
⑨権限を振りかざす人がいる、いつも役職者の意見が結論となる
⑩好き、嫌いに根差した感情的な対立になる
⑪決まったことにメンバーが納得していないし、実行しない
それでは、どのようにすれば生産性の高い会議となるか、それが次の通りです。
1.事前準備
会議を開催するにあたって事前に、①目的・ゴールが設定され、②課題に対して参加者は意見を準備すること、が重要。手ぶらで会議に参加することは許されない。
2.会議とは報告が主目的ではない。議論が主目的である
極端な話、数字の結果報告など会議で行うことではない。グループウェア、メールなどで事前に配布。すでに数字は共有されているという前提のもとで対策や打つべき手を議論するのが理想。
3.場をコントロールする進行(ファシリテーター)
しゃべりすぎる参加者が存在したり、意見を言うことができない参加者が存在するのは、場をコントロールする、いわゆるファシリ
テーターがいないから。ファシリテーターはあくまでも中立的な立場で①話しを引き出す力、②議論をまとめる力、③進ちょくを見える化する力が求められる。
4.時間管理をしっかりと行う
議論は長くやれば良い、というものではない。むしろ、1時間以内など終わりの時間を決めて結論を目指す方が濃密な議論となる。
5.役割分担
必ず必要な役割が進行(ファシリテーター)、書記、タイムキーパー。役割は事前準備の時点で任命しておく。営業会議であれば、時には総務の人間も参加する、など違った目線からの意見もあれば効果的だ。
6.原因分析のための振り返りは重要だが、議論すべきは未来
「目標達成できないとは何事だ!」過去に対する叱責は時には必要だ。しかし、より重要なのは、上手くいかなかった原因を分析し、次は成功すること。更に言えば失敗しないように、先に打つべき手を議論すること。営業会議では業績先行管理が非常に有効である。3ケ月先まで目標までの差額を管理し、差額を埋める打つべき手を考える。これで業績は安定する。
7.アクションプラン策定
良い議論だったが、やるべきことは決まらなかった、では意味がない。行動計画(アクションプラン)は必ず策定する。①定量的な目標数値を、②期限をつけ、③担当を決める。全ての施策に必要な項目である。
8.議事録は早急に共有
議事録の体裁にこだわり、上役への報告のため、何度も何度も推敲を重ね、配布が会議の1週間後。これでは意味がない。すぐに行動に取り掛かるためにも議事録の共有は24時間以内。会議が終わったあとにホワイトボードをスマホで撮影し、それをメンバーで共有でも良い。
9.決めたことは必ず実行、そして次回の会議でチェック
決めっぱなしで実行しないのでは会議に費やした時間がもったいない。決めたことの実行進ちょくを定期的に細かくチェックすることが必要。
鈴木係長は田中課長の説明を聞き、7月の会議の進め方を大幅に刷新しました。現状のデータは予め共有した上で、当日は事前に準備した意見を基に打つべき手を議論。そして「自分一人くらい参加しなくても良い」という意識を持たせないためにも、若手も含め積極的に質問を行う。すると目に見えてメンバーの参画意識が出てくるようになり、最終的な合意も形成できました。
【ポイント】
会議とは成果を出すべきもの。メンバーの仕事に対する当事者意識を持たせるためにも会議を上手く運営せよ。