■7月以降の経営環境はこう変わる
円安、物価高に続き、今後は人件費高に企業は対応しなければならない。7月の参議院選挙の公約にも賃金UPの政策がズラリ並ぶ。70%の企業が赤字の中「言うは易(やす)く、行うは難(かた)し」だ。政治の世界から賃金アップ圧力が重くのしかかる。その対処法は次の3点。
①売上横ばい、減少企業は固定費の大幅カットに踏み込め
3〜4年間、売上が伸びていない企業の賃上げは難しい。最後の手段が固定費の削減だ。それも人件費。採用の凍結、自然減で社員数を絞り、一人あたりの粗利益を拡大する。そして可能な限り、賃上げを実施する。大きな改革だがそれしか方法は残されていない。
②先行投資で全員の給与を一律引き上げる
利益が安定的に出ている企業が前提となる。社員が100人とする。3%の賃上げを実施すると一人年間12万円程度のコストアップ。全社員で1200万円だ。先行投資として打ち出し、モチベーションを上げる方法もある。
③賞与の原資を基本給に組み込む
年間賞与が3ヶ月とする。その一部を基本給に組み込む。更に高い目標を達成できたら賞与を今まで通り支払う。給与は生活給。ベースを上げることが今後の採用力と、モチベーションを高める。物価高から社員の生活を守ることにもなる。
■景気は永遠に回復しない
総理大臣が代わる度に口にする「景気回復」宣言。好景気とは年3%の経済成長を言う。この30年、その3%を超えたのは2010年の一度だけ。それもリーマンショックの反動だ。国別平均年齢も世界第一位の49歳。2050年の人口は9500万人と25%も減少する。世界で最も突出した「老人国家」だ。もちろん企業数は半減する。地域一番、業界一番しか生き残ることはできない。
■生き残る企業の絶対条件
現場主義を貫き、独立して26年。飛躍する企業、潰れていく企業を間近で見てきた。グングン伸びる企業には、ひとつだけ共通点がある。それは企業風土、組織体質だ。理念で束ねられ、目標にひた走り、顧客視点に立っている。こう表現したら「うちも同じだ」と言うかもしれない。要はそのレベルが圧倒的に違う。高校野球とメジャーリーグ以上の違いがある。オフィスに入ったら空気が違う。表情が違う。動きが違う。誰が見ても瞬間にその差に気づくはずだ。
■人が育ち業績が向上する体質を創り上げるポイント
企業風土、組織体質は経営戦略にも勝る。何度も言い続けているメッセージだ。人が育ち業績が向上する企業風土、組織体質はそう簡単にできるものではない。次の8点を理解し、現場で継続実践することだ。
①上に立つ人間の本気度、熱が闘う組織を創る
「魚は頭から腐る」上に立つ人間が弱音、他責では話にならない。率先垂範、具体的な指示。的確な判断。決めたことをやり切る徹底指導。先を見通し、素早く施策を打ち出せる危機管理力。人を育て、目標達成するには上に立つ人間で全てが決まる。
②厳しく指導できないのは、自らがやり切っていないから
やり切っていないリーダーの正論は違和感を覚える。部下は口では「はい、わかりました」内心は「あなたもできていないでしょ…」と間違いなくそう思っている。そんなリーダーは優秀な部下の前だと思いっきり気を使い、厳しい指導ができない。これでは士気が低下する風土となる。緊張感があり、やる気に満ち溢れた組織を創るには、部下の10倍自分に厳しい指揮官のみだ。
③小さなマイナスの芽を早く取り除け
マイナスの芽とは悪い兆候のことだ。例えば表情、言動、身だしなみ。そして5S状況から日報内容まで。特定の顧客に必要以上に訪問する人間は必ずマイナスの芽がはびこんでいる。そして会社批判を繰り返し、去っていく人間は何か問題を起こす。よくあるケースとして誰かを巻き込む。
④人の問題が落ち着いてこそ攻めの体質に転換できる
人の問題は誰もが頭をかかえる。理想とする戦略、布陣になってないからだ。それでも辞めたい…。モチベーションが上がらないと言ってくる社員が後をたたない。当面は採用を強化し次世代を育てながら目標達成に突き進むしかない。戦える体制整備に2〜3年はかかる。そこを乗り越えれば新しい景色が見えてくる。リーダーの頑張りどころだ。
⑤愛社心を育むと一体感が生まれる
デジタル化が加速、テレワークの普及で愛社心という言葉が聞かれなくなった。もはや死語に近い。それでも高収益企業はいまだに愛社心にトコトンこだわっている。愛社心を高めるにはなんと言っても理念とビジョンの共有が必要不可欠。自らの成長と企業の成長(売上拡大)を心底感じた組織はくるったように目標達成に邁進する。愛社心のある人間はポンコツでも決して逃げたりしない。
⑥目標未達でも許される空気をかもし出すな
多くの企業の業績確認会議に参加している。その会議も企業風土、組織体質の「差」を強く感じるものだ。収益力高い企業は驚くほど目標達成にこだわる。月初会議に前月の結果報告と今月の着地予想をリーダーが発表。未達なら、その原因をこれでもかというくらい突っ込まれる。当月の売上着地においても、ハナから未達は認めない雰囲気がある。ピリピリ感が漂い、青ざめているリーダーも中には存在する。楽に儲けさせてくれないし、簡単には賃金も上がらない。
⑦やる気のない人間は組織に必要ない
どんなにフォローしても、誰が動機づけをしてもやる気の見えない、感じない社員はお引き取りを願うのが最善の策。しかし、人手が足りないから辞められたら困る。そう考えるリーダーが多い。そこは考え方を変えるべきだ。複数人辞めても業績はいうほど変わらない。例えば10人の組織で半分の5人が辞めたとする。残ったメンバーが知恵を出し合い業務を効率化しなんとかするものだ。部下の辞めたい、を恐れていては組織が弱体化するだけである。
⑧先の見通せない時代は原理原則に立ち戻れ
競争力高い企業は基本に忠実で、常に原理原則を重視している。当たり前のことを、当たり前に実行する「凡事徹底」型組織なのだ。このような組織は周りから見ると「厳しい」 「早い」「やり切る」というフレーズがピタッとくる。収益力低い企業は「甘い」「遅い」「ぬるい」がしっくりくる。貴社の体質はどちらの方か?
■水は低きに流れ、人は易(やす)きに流れる
大谷翔平選手が所属するロサンゼルス・エンゼルス。二刀流を開花させたマドン監督が14連敗を喫し、解任された。
プロの世界は本当に厳しい。ビジネスも同様、今後ひと握りの強い企業しか生き残れないのは明確だ。人が育つ企業風土、目標が達成できる組織を創り上げるには指揮を取るリーダー次第で決まる。リーダーが甘きに流れては企業は淘汰される。 (株式会社経営支援センター 国吉拡)
ワンポイントトーク
【行動は、言葉の何倍もの影響力がある。まずは上に立つリーダー自ら決めたことをやり切れ!】