◆政治・経済を語れない人間は、役職者から相手にされない
先日訪問した、ある経営者A社長との会話です。「吉田さん、今回の選挙についてどう思いますか?」「与党が過半数割れしたのは、政治資金(裏金)問題に大きな要因があることは事実です。しかしながら、結局のところ昨今の物価高、実質賃金は上昇せず停滞。社会保険や税金負担の増大など、身近な不満が与党に対する不満につながったのではないでしょうか。」次にこのような話題に移ります。「今後の日本はどうなると思いますか?吉田さんの意見は?」「はい、日本の人口減少は以前の予測をはるかに上回るスピードで進んでいます。2023年の死亡者数は約160万人。コロナ前の予測では160万人に達するのは2030年以降と言われていました。7~8年前倒しで死亡者数は増加しています。人口減少をいかに食い止めるか、ではなく、人口減少は当然のものとして国としての政策、企業としての戦略を打ち出していかなければ、生き残っていけないでしょうね。また、人口減にスポットを当てたビジネスは今後のヒントになるでしょうね。」A社長「そうなんだよ。常に情報を収集しなければ、経営のかじ取りなんかできない。昔のやり方や情報は1年もすれば時代遅れになる。そこを理解していない人間が営業に来て、商品の紹介をしても話を聞く気にもなれない。」
随分と辛らつな意見ではありますが、これこそが真実です。営業の基礎的な研修では次のように教わります。「政治」や「宗教」の話題はタブーであり、商談の現場では話題に出してはいけない、と。これは正しくもあり、誤りでもあります。担当者レベルの商談であれば話題は「商品」についてが無難です。しかしながら、役職者、特に経営者との商談では、「商品」の話題よりも、「政治、経済、宗教、思想、社会問題」などタブーとされる話題もてんこ盛りです。むしろ、経営者との会話で「自社の商品」についての提案などは短時間で終わることの方が多いです。経営者は「この営業マンは政治や経済の知識があるか?有益な情報をもってくるか?」を見定めています。政治・経済・社会知識の欠如を見透かされてしまえば、提案したい商品の説得力もありません。私たちは、最新の情報を貪欲に吸収していかなければならないのです。
◆新聞、特に日経新聞こそが最大の情報源
新入社員や若手社員の研修で「新聞を読んでいますか?」と尋ねるとほぼ手を挙げる方はいません。管理職対象の研修でも2割いればよい方です。いまの時代、それほどまでに新聞を読む習慣は失われています。中にはこのようなことを主張する方もいます。「ニュースは読んでいます。Yahooニュースから情報を仕入れています」と。全く情報を仕入れないよりは良いですが、ネットニュースの情報は、スポーツ・芸能など自分の興味のある情報ばかりクリックしてしまい、結局情報の偏りが生じます。その点、新聞から情報を収集することは自身の興味・関心に関係なく、あらゆる角度から情報を集めることができます。大手紙、業界紙、地方紙、全てに目を通すことが理想ではありますが、少なくとも日経新聞は毎朝読む習慣をつけてください。なぜなら、「今日の日経にも出ていましたが・・・」などの会話は役職者との商談の中では当たり前のように出るからです。それでは、日経新聞を毎日読むにあたりどこに注意すれば良いでしょうか。
①身銭を切る
事務所に毎日新聞が届き、社員が自由に読むことができる会社も多いです。しかしながら、届いた新聞を積極的に読んでいる方はあまりいません。「タダ、無料」は有難みがないからです。自分の財布から支出し、購読すると、「せっかくお金を払ったからもったいない」という気持ちが働き、不思議と毎朝読む習慣が産まれます。これは新聞に限りません。例えば金融投資を行うことも、自分の資産に関わることですので、経済や政治に関する情報を無意識に集める習慣につながっていきます。それほど「身銭を切る」ことは効果的なのです。
②朝礼で読み合わせを行う
強制から自発は生まれていきます。まずは、読む習慣をつけるためにも、朝礼で当日の日経新聞の中で気になった記事を1つ紹介させるのも効果的です。「発表しなければならないから読む」であったのが、習慣化により「読むのが当たり前」になっていきます。
③まずは、見出しの全てに目を通す
全ての記事に目を通すのが望ましいですが、非常に時間がかかり朝の忙しい時間では難しいのも事実です。まずは見出しの全てに目を通し、世の中の流れを理解し、気になった見出しの記事を読むのでも構いません。一般的に日経新聞に限らず新聞は一面や、見開きの左側ページ右上に重要なニュースが掲載されています。
④自社に関連する事柄は出ていないか
不動産、建築業界に関連する事柄は従事している方も多いので、毎日のように記事が出ています。競合、同業大手企業の動きや、関連する法律改正の記事には必ず目を通しておいてください。
⑤「お客様」、もしくは「お客様のお客様」の情報は出ていないか
「日経新聞に載るような大企業とは付き合いがない」と言われる方もいらっしゃいますが、業界や社会の動きと無縁の企業は一切ありません。また、自社が大企業と付き合いが無くても、取引先が大企業と付き合いがあるケースは非常に多いです。「お客様」の「お客様」を理解した提案や商談は深みが増します。
◆新聞から情報を得て知識を身につけよう
結果的に日経新聞を購読することで知識を身につけることができます。知識は武器であり、他との差別化になります。営業リーダーの皆さん、ご自身が日経新聞を読むことは当然のこととして、チームのメンバーにも日経新聞を購読させる習慣を付けさせてください。
【ポイント】
日経新聞はできる営業の必須アイテム。毎月約5000円の投資が数億円の利益、自身の収入増加につながることは間違いない。