■売上を上げることで利益はついてくるか、を検証せよ
経営とは売上を伸ばすことではない。「営業利益」を最大化することである。高度経済成長時は売上を伸ばすことで粗利益も営業利益も確保できた。しかし時代は変わり人口減少、少子高齢化時代へ突入。価格については過去と比較にならない低価格が求められている。だからこそ売上至上主義で、必ずしも利益が出るかといえばそうでもない。要は売上の中身の問題。安易な安売りで売上を伸ばしては赤字に陥る。そして売掛金や在庫も膨らみ企業体質は悪化の一途をたどる。
■小売価格はインフレ。企業間取引のデフレは長引く
消費者物価指数とは食料品からガソリンまで日常生活の必需品が中心。この一年、前年同月比2%から3%の物価高、つまりインフレ状態だ。ところが企業間の取引はいまだに価格の下げ合い合戦であり、凄まじいデフレ状態。中小企業では、もはや消耗戦となっている。今年秋口から来年にかけて更なる「価格下落合戦」は続く。終わりは競合先の廃業、淘汰のみだ。これから生き残りの叩き合いが本格化する。
■幹部は利益の上がる収益構造の改革を急げ
いまなお毎月、直接指導させていただいている顧問先が20社。上場するまで成長した支援先もある。反面、破綻した企業もあった。経営の実際を生々しくリアルで診ている。口幅ったい言い方になるが、常に経営者視点で現場に挑む。いかに皆のやる気を高め、利益を出すかが最大のテーマ。同時に、顧問先の役員陣に何かあったら、いつでも自ら参画し、リーダーシップを発揮する能力と覚悟がないと、この仕事は難しい。経営とは常に数字との戦いであり、存続か破綻かの世界。そんな姿勢の幹部なら必ずや収益構造改革に着手し、大きな成果をあげる。その着眼は次の8点。
1.粗利益率の高い商品の構成比を徹底して伸ばせ
幹部は常に数字の中身、正体を分析することが大切。明日からでも出来ることは粗利益率の高い商品のウエイトを上げることだ。収益構造改革にウルトラCはあり得ない。粗利益率の高い商品を地道に継続して伸ばすことで同じ売上高であっても、売上総利益(粗利益)は確実に増加する。
2.安売り商品販売後の、肉付け(高粗利)商品の拡販
先に記載したとおり、企業間取引の価格競争はとてつもなく厳しい。どうしても価格が受注する最優先になる。そこは戦略。商材によっては、あえて薄利で受注する突破口商品と位置付ける。問題はその後の料理のやり方だ。薄利で受注した先に様々な商品を売り込めるか、どうかだ。それを肉付けという。薄利商品は受注して終わりではない。受注後がスタートであり、マネジメントの腕の見せ所である。
3.「右から仕入れて、左に売る」これが一番、儲からない
メーカーや小売業は大企業が中心。その流通に多くの中小企業がひしめく。大企業から仕入れて大企業に販売。これでは全く利益は出ず、逆ザヤになることも珍しくない。そこは経営戦略の見直しが急務。例えば自社内で加工する、もしくは組み立てる。圧倒的なスピード納品の実現。海外仕入れ商品の拡充。自社の強みを強化しない限り価格競争に陥り、市場から退場(倒産)することになる。幹部は知恵を絞れ。
4.遠距離の得意先は抜本的に見直せ
「遠くの親戚より近くの他人」理屈は同じ。どうしても小回り、対応力で近場の競合先には勝てない。遠距離の得意先が大手で取引額も大きければ、近くに営業所を出すことも戦略のひとつ。一番マズイのは遠くて将来性もなく、しかも、薄利で販売している先だ。そんな先に限って遠いところからよく来てくれたともてなしてくれる。ガソリン代、交通費も稼げない。それでも営業マンは行きやすいから、優先して訪問するケースが実に多い。
5.新商品の開発を諦めるな
ユニクロ、柳井会長の出版した本の中に、「一勝九敗」がある。新商品、新規事業の失敗。ヨーロッパ市場からの一時撤退。いまやあれだけの高収益企業。しかし、その過程には多くの失敗があった。新商品開発とはそう簡単なものではない。商品を生み出す苦しみと、それを稼ぎ頭にする、育てる苦しみがある。重要なことはそれを成し遂げようとする熱の入った組織であり、人材の存在だ。その諦めない企業風土があってこそ、いずれ新商品が開発され収益の柱となる。
6.長期在庫は利益低下の諸悪の根源
まずは全社員が「在庫はお金」という認識をもつことだ。在庫はお金と言葉では発する。しかし自らの財布から出ているわけでもなく、渋沢栄一の一万円の札束が在庫になっているわけでもない。残念ながら経営者が思っているほど意識は高くない。それも幹部のマネジメント。仕入れて販売するまでの在庫回転率をデータで読み取る。滞留在庫になる可能性がある商品は高く売るのではなく、早く売り現金化する。幹部は四方八方から目を光らせないといけない。それが幹部の危機感だ。
7.マンネリに陥ったベテランを若手と交代
特にベテラン営業のマンネリは見るに堪えない。時代の変化に対応できず、行動力も鈍い。プライドだけは高く先の予測も根拠はないのに目標達成と申告する。しかし結果は目標に大きく届かない。ベテランのマンネリ営業に任せていては、毎年20%売上は減少する。採用が難しければ、若手を中心に顧客を分散させた方がベスト。これも収益構造の改革の着眼である。
8.システム、IT投資、人材投資もバランス良く
小さな間接部門を目指すにはシステム、IT投資は欠かせない。基幹システムとなると莫大なコストがかかる。大切なことはそれを効率よく使い、生産性向上に役立っているかだ。そしてこの厳しい経営状況下でも人材投資に熱心な企業の業績は底堅い。経営がハードからソフトに変わった。やはり最後は人の質の勝負となる。
■幹部のミニ経営者化が収益構造改革の本丸
長くこの仕事に携わっていると、変われる幹部、変われない幹部を見極めることができる。変われる幹部は、キャリアとともに素直になれる。誰よりも努力し勉強する。チャレンジ精神が旺盛で部下に対し愛情がある。唯一私が主催するセミナーが国吉道場だ。25年続く年一回の12人限定。「志」高い幹部の受講を心よりをお待ちしている。
ワンポイントトーク
【幹部は、自社の収益構造がどう変わったのかを細かく把握せよ。過去と現状を比較することで、次打つべき手が見えてくる!!】