リーダーのあるべき姿

リーダーのあるべき姿

2024/06/01

リーダーのあるべき姿

テーマ㉝最終回「リーダーのあるべき姿」

約3年にわたり、「自律的に動く社員の育て方」と題し部下育成について様々な視点から執筆して参りました。今号、最終回として部下を育てる上司、リーダー自身のあるべき姿について論じます。

「あなたはリーダーの資格があるか?

    以前営業支援を行った、ある会社様でのエピソードです。売上向上のため、業績先行管理の会議運営と営業研修を毎月実施する運びとなりました。現状の組織・戦略のどこに課題があり、何から手を付ければ良いかを把握するため、営業マンの面談、営業現場の同行、顧客満足度調査を行いました。

    その中で目標未達が続く拠点の若手から優秀社員まで全メンバーと面談を行います。私が「この拠点の問題はどこですか?」と尋ねても詳細までは語ろうとしません。差しさわりの無いことは話しますが、どこか引っ掛かりを感じます。その後、拠点のエースと終日営業同行を行い、ほどなく問題の本質を理解することができました。それこそが、拠点長のリーダーとしての資質の欠如です。①数字の詰めはあるものの、どうすれば達成できるか、具体的な指示やアドバイスがない、②部下が手柄を上げても自分の手柄と捏造し経営陣に報告をする、③そりが合わない部下には報復として案件を渡さない、④態度の裏表が非常に大きい(上にはこびへつらい、下には高圧的)⑤目標未達の原因は自身の戦略の欠如にも関わらず、すべて部下の営業力不足と論じる、⑥現場に出たがらず、事務所にこもる、⑦スケジュール上は顧客とのアポとなっているが、訪問の形跡がない、⑧そもそも営業力がない、など「本当にこれで大丈夫か?」と思えるほどに資質が欠如しているのです。そして、耳を疑ったのですが、目標達成が久しぶりに見えたある期末、メンバーは拠点長に目標達成の実績をつくらせたくないため、あえて実績を出さず目標未達に終わったこともあった、と。厄介なことにこの拠点長は上に対するケアが非常に上手ですので、経営陣もその本質に気づいていないのです。

    これは極端な事例ですが、大小を問わず似たようなリーダーはどの企業にも存在します。このようなリーダーが「自律的に動く社員」を育てることができるでしょうか?100%不可能です。我々上司は部下のことを見ていますが、部下はその10倍上司のことを観察しています。尊敬できない、信頼できない上司の発言が部下に響くことは決して無いのです。

リーダーの条件と役割

    それでは、あるべきリーダーの条件と役割はどのようなものでしょうか。

1.尊敬、信頼されるリーダーたれ

    言っていることは正しくてもこのリーダーのいうことは聞きたくない。綺麗な言葉は並べるものの、響かない。それはリーダー自身が尊敬されておらず説得力がなく、また、部下と信頼関係も構築されていないだけ。尊敬、信頼を勝ち取るべくリーダー自身が成長し、実績を上げ、また部下に対し深い愛情を持つ必要があります。

2.組織ファースト、目標達成

    自身のことは二の次。まずは組織としての目標達成を最優先事項とし、汗水を垂らすべき。

3.ただのYESマンではダメ

    会議の場で社長の指示を「はい、わかりました」とニコニコと聞きながら、会議が終わり自部署に戻ると、正反対の言動。自身に譲れない考えがあるのであれば、上司であっても議論を戦わせることを恐れてはいけません。裏表のある態度に部下は幻滅するのです。

4.部下のことを深く観察し、どのような指導が効果的かを検討

    新人、若手には基本の徹底、考え方の細かな指導。中堅社員には考え行動させる場を提供。ベテラン社員には詳細の指示は行わず、結果に責任を負ってもらう。部下一人ひとりをよく観察し、どのような指導が効果的かを具体的に検討することも大切です。細かな指導が効果を発揮するケースもあれば、細かな指導が考える習慣を損なうケースもあるのです。

5.勉強を行い戦略を持つ

    絶えず勉強を行い、チームが進むべき戦略を立案してください。そのために新聞・専門誌・ビジネス書・古典など読書の習慣をつけ基礎知識・専門知識・社会知識・教養を身につけるべきです。

6.組織・社会は矛盾の宝庫。原因自分論に徹する

    組織・社会は矛盾の宝庫であり、時には納得いかないことも多く存在します。「出来損ないの部下を与えられて目標達成できない」、「こんな商品売れっこない」と出来ない原因を他に求める原因他人論では、物事は改善しません。出来損ないの部下なのであれば、少しずつでも良いので育てていく。商品力がなければ営業力でカバー。自分を軸に行動を考えれば、打つべき手は無限に存在します。

7.「忙しくて部下を育てることができない」ではなく、「部下を育てていないから忙しい」

    結局のところ、部下を育てないことは、上司であるあなた自身の将来の負担となっていきます。部下を育ていまの仕事を部下に渡し、早く自分は次のステージに行く。自分自身がいまに安住せず、「新」に挑戦する、このような気概もリーダーには必要です。

最後に

    私の仕事人生は決して順風満帆ではありませんでした。数々の大きな失敗も重ねてきました。その経験を本コラムで連載してきましたが、執筆してきた内容が上司、部下、組織全体の成長に少しでも寄与することを願いまして、本連載は終了とさせていただきます。

    来月号より、テーマを「業績を上げる営業リーダー」とし、営業にポイントを絞り執筆する予定です。引き続きのご愛顧をいただければ幸いです。長らくのご愛読ありがとうございました。

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