■最大の社会貢献とは納税の義務と雇用の確保である
SDGs(持続可能な開発目標)。ESG投資(環境、社会、企業統治)。ブラック企業からホワイト企業まで世の中の流れを表す様々な言葉をメディアが取り上げる。しかしそのようなキーワードをいくらかかげても赤字なら企業はもろくも倒産する。企業の目的は人を育て利益と資産を最大化することにある。それによって納税ができ財務基盤が強固となる。雇用も確保でき待遇も改善できる。これこそが最大の社会貢献。「赤字は悪」である。幹部が「赤字は悪」と骨の髄まで浸透が出来ていない企業は組織も緩く、なごやかな雰囲気をかもし出す。経営とは慈善事業ではない。生きるか、死ぬかの真剣勝負だ。
■4月以降は更に厳しい経営環境となる
3月に入り、衝撃的なニュースが入ってきた。全米16位のシリコンバレー銀行と29位のシグネチャー銀行が経営破綻した。思い出すのは2008年のリーマンショック。リーマンショックは戦後最大の経済の落ち込みで世界で経営破綻が相次いだ。この一ヶ月間は金融機関の動向に目が離せない。日本国内は猶予されていた返済が始まり、原材料高と円安で仕入れ原価は上昇。新卒採用も初任給を上げ、休日を増やさないと採用も出来ず。初任給を上げると全体のバランスを取るため全社員の賃金も上げなければならない。休日増も労働生産性を飛躍的に高めることが条件となる。これから経営が厳しくなる企業は①価格転嫁が出来ない②人が採用できない③人件費、エネルギーコスト増を吸収できない。相当な数がこの4月以降で市場から退場、つまり倒産するのは間違いない。
■人の質を上げてこそ高収益企業となる
現場第一主義を貫き独立して27年。様々な企業の現場に入り、いまだ悪戦苦闘する毎日。収益の差は一体何だろうと常に考えている。やはり圧倒的に「人」の差だと一万%と自信を持って言い切れる。結局、人の差が業績の差となるのだ。近代日本の政治家、後藤新平は「財を残すは下、仕事を残すのは中、人を残すのは上」100年以上前の言葉。令和時代の今だからこそ新鮮に聞こえる。これは時代を越えた普遍の原理なのだ。生産性を高められる人の育て方は次の10点。
①理念の浸透→自らの成長と会社の成長が一致する
②躾力→空気が読め気づきのレベルが高まる
③人間力→誠実、嘘をつかない。誰からも好かれる
④心のスキル→目標が明確で、常にモチベーションが高い
⑤専門性→説得力があり、顧客から信頼を勝ち取れる
⑥実践主義→即行動に移す。量から質は生まれる
⑦考え方→人のせいにしない。原因自分論で成長が加速
⑧素直さ→経験を積み重ねても変化対応でき常に成長する
⑨報連相→情報共有と的確な判断力が身につく
⑩やり切る力→リーダーによるプロセスチェック
①~⑩まで出来て当たり前のことばかりだ。しかしこれがなかなか難しい。各項目10点満点で合計100点。80点以上取れる人間は生産性が極めて高い。
■コストアップが確実視される今後の収益力の高め方
物価高とエネルギー価格上昇で消費者の財布のヒモはより慎重になる。そして高額商品は購入時期が「今ではない」と思う消費者が多い。この様なインフレ期(物価上昇)に儲かる組織づくりは次の5点。是非、ヒントにし、今のインフレを収益改善のチャンスに変えて頂きたい。
1.短納期、高品質、小口受注は高い粗利益率に直結する
縮小する市場においては短納期、高品質、小口受注は高い粗利益率を実現できる。分析をすると一目瞭然だ。5年前に比較して受注から納品までの日数が短くなっているか。クレームが減少しているか。一件あたりの受注が少なくなっているか。これは短納期、高品質、小口受注と言うことだ。キメ細かい対応が必要で大企業ではなかなか出来ない。小さな受注に手間がかかるとほとんどの企業が嫌がる。しかし、そこに勝機がある。
2.価格とは企業の総合力、価値で決定される
世はインフレでも顧客は常に安さを追い求める。複数見積もりは当たり前。しかし安いだけで売れるわけはない。まず「価格=商品」と言う概念を変えることだ。いくら商品が安くても、その後のフォローが弱い。品質に問題がある。配送でも遅配、誤配が多い。新商品等の提案が無い。これだと一度取引きしても、確実に他社に切り替えられる。価格とは企業の総合力、価値で決まる。
3.高く仕入れても高く売れる戦略を考えろ
特に最近の不動産業界は深刻だ。土地の仕入れ価格が一段と高まり、上物(住宅)を作っても従来より販売価格が高く売りづらい状態だ。しかし、伸び続けている不動産会社は高く仕入れて、高く売るノウハウをしっかり持っている。金利は低くなることはないですよ。資材はまだまだ上がります。むしろ今が一番安いです…。娘さんがご結婚。親としては近くに住んで欲しい。そのような顧客を探し出し、親から資金を出してもらう…。これも立派な戦略だ。
4.消耗品はシェア拡大。戦略商品、付属品で稼ぐ
例えばティッシュペーパーや食品でいうと卵、物を包む包装資材が消耗品にあたる。原材料高や鳥インフルエンザなどで一時的に価格は高騰しても、いずれ下落する。これが消耗品の宿命なのだ。消耗品は、仮に薄利であってもシェアを伸ばす戦略が最も重要。シェアを拡大しそこに利益の取れる戦略商品を投入する。合わせ技で利益を確保する。そしてメイン商品はどうしても価格競争が激しい。複合機はほぼ利益ゼロ。しかし、コピー用紙やトナーは利益益率が高い。もしマクドナルドでハンバーガーだけを販売したら全く利益は出ないだろう。ポテト、飲み物はおそらく80%以上の粗利益率。そこが高収益の秘訣。視点を変えてみよう。
5.徹底した新規開拓の実践
顧客の売上が伸びなければ自社の売上も当然厳しくなる。今こそ新規開拓が最も重要だ。顧客件数が増えての売上拡大は成長。顧客件数が減少しての売上拡大は膨張。一社の顧客への依存度が高くなっているはずだ。これは大変危険な状態。その顧客に何かがあったら経営的なダメージは避けられない。逆に、顧客数を拡大すると経営の安定化が図られる。だからこそ新規開拓の実践が必要。新規開拓は本当に泥臭い。飛込み、アポイントと言った、過去も現在もやり方に変わりはない。今の顧客だけに頼るとどんなに頑張っても10%〜20%は売上は減少する。
■儲かる会社になるには、リーダーの覚悟で決まる
年間目標がいつのまにか前年クリアにすり変えられている組織が実に多い。「リーダーの弱音は部下の安心を生む」。部下はリーダーの後ろ向き発言に内心大いにホッとするのだ。儲かる企業とはまず空気が違う。その空気は組織を束ねるリーダーが創り上げる。一円でも目標未達は許されない。その覚悟をリーダーは本気で持つことだ。
(株式会社経営支援センター 国吉拡)
ワンポイントトーク
「収益力」の差は「人の質」の差。リーダーは「人で勝負するチームづくり」を再徹底せよ!