あなたの指示は伝わっていない

あなたの指示は伝わっていない

2022/12/08

あなたの指示は伝わっていない

 「前も言ったじゃないか!一度言ったことをまた言わせないで!」部下指導の現場で上司がよく発する言葉です。また、部下も、「教わったことは一度で出来るようにならなければならない。」と新入社員の時代から教えられています。残念ながらどちらも誤りです。なぜなら、上司が伝えたいことはほぼ部下に伝わっていないからです。一度指示したことを部下が理解し、期待通りの行動を取ることは無理。今回は部下がどうすれば指示を理解し、行動に移すことができるかを解説します。

「前に伝えたことを何度も言わせないで!」

  

食品卸売業A社、総務課でのある一コマです。鈴木係長は部下である2年目社員、加藤君の指導に手を焼いています。フロアでは今日もまた鈴木係長の強い言葉が飛び交っています。「大事なことだから、一回しか言わない。よく聞いてよ。」「これ、前に言ったよね。社会人なんだから一度言われたことはちゃんと理解して。何度も言わせないで。」そのように言われ続けた加藤君はますます委縮していき、疑問があっても相談ができません。するとまた、鈴木係長は言います。「分からないことがあったらすぐ相談して!」

    隣の島からその様子を見ていた人事課の中山課長は見かねて鈴木係長に対し、部下に対する指示のあり方のついて話をしました。

解説 

10月~12月は管理職向け研修の最盛期です。コロナ禍で対面の研修を控えていたこともあり、今年は非常に多くの企業が研修を実施しています。弊社でもありがたいことに多くの依頼を頂き、その中で毎回のように受ける質問が「指示を理解してくれない」、「何度言っても同じミスをする」です。そのような質問への回答、つまり部下に指示を理解させるポイントは次の通りです。

1.指示は伝わらない

  上司の指示が全て部下に伝わっていることはありません。人と人とのコミュニケーションにおいて、伝えたいこと全てのうち、2~3割しか相手は理解していない、という統計があります。つまり、説明をしているのに理解できないのは当然の結果であり、一度伝えたところで理解していないのもまた、あたり前のこと。まずは、上司が自分の指示が部下に伝わっていない、と認識し、その前提があって初めて、伝え方の改善を図ることができる。

2.伝え方の精度を上げる

①結論から伝える

最初に伝えた話、冒頭のエピソードは記憶に残りやすい。本当にやってほしいこと、理解してほしいことをまず伝える。

②繰り返し言う

    大切なキーワードは何度も伝える。一度言って理解できなければ二度言う。二度言って分からなければ三度言う。五回、十回と言っ

ても問題はない。ただし、部下からすると、「何度も同じことを言いやがって」と不満に思う可能性もある。これは、日頃から上司と部下との間で、大事なことは何度も伝え、何度もお互いが確認をしなければならない、と共通の認識を持っておく必要がある。

③事例を交える

    部下の頭に映像として記憶させる。例えば「それはやってはダメ」ではなく「それはやってはダメ。去年そのやり方でB社からすごいクレームが来たよね」、と具体的な事例や経験を交える。

④ただの作業の指示ではなく、「何のために」と目的を伝える

    ただ、「この書類を作成して」ではなく仕事の全体像を伝え、「このような目的があるから書類を作成する必要がある」、と伝えることで、指示した仕事をただの作業に終わらせないようにできる。

3.「覚えておけ」ではなく「口に出す、書く、実行する」

「聞く」だけ、「見る」だけでは記憶に残ることはない。得た情報はアウトプットをして初めて頭に刻み込まれる。そのアウトプットは「口に出す」、「書く」、「実行する」の3つしかない。つまり、「大事だから覚えといて」と言わず「大事だから書いておいて」に直す。また「何から実行するか言ってみて」と指示を復唱させることが大切。

4.指示も重要だが確認も重要

指示しっぱなしの上司も多い。指示をするだけではなく、進ちょくを確認することは更に重要だ。指示自体を忘れてしまっているケースもある。指示通りに業務が進んでいるか、定期的に確認し、軌道修正を行う。

5.出来てなくてあたり前。忘れてあたり前。再度指示を行う

 指示した内容が理解できておらず、間違った手順で進めている。当然それはあり得るもの。そこで叱責を行うのではなく、淡々と再度同じ指示をすれば良い。ムダな感情摩擦は信頼関係を損なう。言葉丁寧、内容正論で再度指示を行うこと。

6.上司の器

部下育成は上司の器の問題でもある。会社側から「その子の面倒をみなくてよい」と言われない限りは育成をしていかなければならない。言っても聞かないからといって匙を投げることは許されない。我慢強く、何度も部下に向き合っていく上司の忍耐力も必要となる。

中山課長の話をきいた鈴木係長は、部下に対する指示の出し方を改めました。大事なことだから、一回ではなく、何度も伝える。なるべく相手の理解ができるよう伝え方を工夫する。そして、指示した後、加藤君から改めて相談があっても真摯に対応するよう努めました。そうすることで次第に指示の理解が深まっていきました。

ポイント

    あなたの指示は伝わっていない。重要なことはどう伝えたかではなく、どう伝わったか。伝え方を改善する努力を怠ってはいけない。

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